2015年1月23日金曜日

歴史の表裏「十字軍とジハード」 ~イスラム国日本人人質ビデオの背景~ 

 イスラム国(IS)が、日本人人質2人を獲ったと、安倍晋三首相にビデオメッセージをインターネットに公開しました。
 その中で、「日本の首相は、自ら進んで十字軍に参加した。」という言葉がありました。
 欧米の立場の歴史を習った日本人のみなさんは、 「あれ、十字軍って悪いイメージないんだけど?」と素朴な疑問をもった方も多いのではないかと思います。(私もそう思いました)
 
 ところが、十字軍の評価は、キリスト教とイスラム教で大きく異なります。
 そこで、なるべく中立でわかりやすく、「十字軍」と「ジハード」の歴史的について、説明します。
 
 11世紀後半ごろ、キリスト教の聖地エルサレムを含む中東地域は、イスラム教国が支配していました。
 このイスラム教国の支配からエルサレムを奪還するという大義名分のもと、東ローマ帝国の皇帝(アレクシオス1世コムネノス」シ)が、ローマ教皇(ウルバヌス2世)に要請して結成されたキリスト教徒の軍隊が、第1回十字軍(1096年~1099年)です。
 この時の十字軍は、シリア各地へ侵入し、ついには聖地エルサレム(現在のイスラエル)の奪還に成功します。キリスト教では、神聖な軍隊と長い間、言われてきました
 
 
          <第1回十字軍の遠征地図>
 
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 ところが、その途中では殺戮を繰り返したので、イスラム教徒から見れば、十字軍は侵略軍、「悪の軍隊」とみなされています。
 十字軍は、その後も何回も結成されますが、次第に成果もなく規律も悪くなります。
 第3回十字軍(1189年~1192年)に対し、イスラム側のアイユーブ朝の指導者サラディン(サラーワッディ-ン)が、聖戦宣言をして戦います。これが、ジハードと言われています。
 
 
<現在の中東地図 (イスラム国の表示はありません)>
 
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 今回、説明した歴史的事件は、1000年近く前の話ですが、その後も現在まで、キリスト教側から大義名分をもった軍隊やグループを「十字軍」と言い、イスラム教側から大義名分をもった戦いは聖戦(ジハード)というのです。
 
 たとえば、2001年9月11日の「アメリカ同時多発テロ」の発生直後、ブッシュアメリカ大統領は「これは、テロリズムとの戦い、十字軍だ。」と言っています。
 一方、イスラム教の過激派は、欧米との戦いを「ジハード」と呼んでいます。
 
 歴史に宗教が絡むと、難しいですね。「歴史はいつも表・裏」なのです。

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