2015年3月25日水曜日

あったカフェの話3 伝説の喫茶「しぁんくれーる」 ~二十歳の原点の舞台~

 「あったカフェ」の3回目は、京都の伝説のジャズ喫茶「しぁんくれーる」です。

 「しぁんくれーる」は、星野玲子さんという方が、1956(昭和31)年に京都市上京区河原町に開店させた学生街にある喫茶店です。

 店の名前は、フランス語の「Champ Clair」(明るい田舎)に由来しているそうですが、日本語の「思案に暮れる」に通じる響きが、何とも癒されます。

 外観は赤レンガで、1階はクラッシック、2階はジャズをレコードで流す店です。京都を代表するジャズ喫茶というより、「伝説のジャズ喫茶」です。

 有名な来店者としては、歌手の浜田省吾さんが、まだ売れていなかった若い頃によく通っていたのをはじめ、「ジャズの帝王」と呼ばれるマイルス・ディヴィス(アメリカ、1926年~1991年)や、「この素晴らしき世界 What a Wonderful World」で世界的に有名なルイ・アームストング(アメリカ 1901年~1971年)も来日時に来店しました。

<京都の「喫茶「しぁんくれーる」



  しかし、「しぁんくれーる」を、ジャズ好き以外の人に有名にしたのは、何といっても、高野悦子(たかの・えつこ)さんという立命館大学の女子学生です。

 高野悦子さんは、1949(昭和24)年1月2日に、栃木県西那須野町(現:那須塩原市)で生まれました。
 高校卒業後、京都にある立命館大学文学部に入学します。

 1960年代末の大学は、学生運動が激しい時代で、高野さんは運動から1歩引いていましたが、友達が学生運動に参加したり。授業が休講になるなど、徐々に巻き込まれていきました。

 この高野悦子さんが、二十歳になった時に、書き始めたノートが「二十歳の原点」(1971年新潮社刊 タイトルは「にじゅっさいのげんてん」と読みます。私はずっと「はたちのげんてん」だと思っていました。)です。

 「独りであること、未熟であること、これが私の二十歳の原点である。」で始まる、二十歳の女子大生の青春の記録は、6月に鉄道自殺という悲劇的な結末で終わります。

 しかし、2年後に「二十歳の原点」の名で出版された彼女の日記は、多くの共感と感動を生み、「二十歳の原点」、その前の高3~大2までの記録「同 序章」、中2~高3までの「同 ノート」の3部作で、350万部を売る大ベストセラーになりました。

 この彼女が、恋愛や学生運動に疲れて、唯一のやすらぎの場所として、入り浸った喫茶店が、「しぁんくれーる」でした。

 私自身も二十歳前後の頃は、何度も「二十歳の原点」を読んで、喫茶「しぁんくれーる」に憧れました。

<「二十歳の原点」の表紙と高野悦子さん>



 かつて、坂本龍馬などの幕末の英雄が活躍した京都の街の真ん中で、ジャズやクラッシクを聞きながら、コーヒーを飲み「思案に暮れる」って、すごくいいと思いませんか。
 この店を、「あったカフェ」でご紹介した所以です。

 実は、残念なことに、この店は、今はありません。

 私は、閉店する直前に、1度だけ、京都の「しぁんくれーる」に行ったことがあります。
 高野悦子さんに想いを馳せながら、その時に作った詩を書きます。


詩 「しぁんくれーる in Kyoto」

都会の流れに逆らう勇気
ふと忘れかけ 足どり止める
いつもの喫茶 シァンクレール
いつものドアを そっと開くと
「Tomorrow Never Knows」が流れてきた
明日は知らない
今日も知らない
一人で 思案に暮れる in  Kyoto

南の隅の指定席で
窓辺にもたれ コーヒーを飲む
白いミルクとコーヒーが カップの中で溶け合えば
心の色と重なって
乾いた古都の シァンクレール
擦れた夢の オアシスなんだ
ガラス張りの窓からじっと
シナリオのないドラマを見つめる
シァンクレール in  Kyoto

横断歩道で立ち止まる老人
ちょっぴりはにかみ 笑いあう少女たち
車に乗った男女のカップル

それぞれの人が
それぞれの人生
持て余しながら歩いている
ついさっきまで 私もそんな一人だった
でも 今は
思案に暮れる in  Kyoto

かつて ここへ来たはずの 
一人の女学生に想いを馳せる
カチカチカチ----古時計の音が
あの頃を呼んでいる

あの頃は あの頃は
みんなが頭で生きていた
あの頃は あの頃は
みんなが体で生きていた
勿論 彼女もそうだった

今は-------

ガラス越しなら
これほど いじけた心さえ
カップル見ても僻まない
美人見ても 血が上らない

自分が読める 都会の図書館
しぁんくれーる in  Kyoto



<高野悦子さんが通った立命館大学>



 最後に、ネット検索でヒットした、全国のカフェ・喫茶「しあんくれーる」や「シアンクレール」を紹介します。

 それぞれのお店が、京都の「しぁんくれーる」の雰囲気を引き継いでいる「あったカフェ」かどうかは、近くの方が実際に行ってみて教えてください。

 私も、機会があれば、行ってみようと思っています。



▲ カフェ「しあんくれーる」 (北海道釧路市愛国東)
    TEL   0154-36-6742

▲ 洋菓子・喫茶「シアンクレール丸井溝口店」 (神奈川県川崎市高津区)
    TEL   044-814-0101

▲ 喫茶・イベントスペース「シアンクレール」 (山梨県富士吉田市下吉田)
    TEL   0555-24-2938

 カフェ「しあんくれーる」(高知県香南市野市町)
    TEL  0887-55-5188


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