さだまさしさんが、1987(昭和62)年に発表した歌が「風に立つライオン」です。
このタイトルだけでもワクワクしませんか。
今回は、「風に立つライオン」という歌と、これをもとにして、さだまさしさんが書いた同名の小説、そして平成27年3月14日に、東宝から全国ロードショーされた映画「風に立つライオン」(監督 三池崇史、出演 :大沢たかお・石原さとみ他)を紹介します。
まず、「風に立つライオン」という歌は、アフリカのケニアで、青年海外協力隊として国際医療活動をした実在の日本人医師・柴田鉱一郎さん(1940<昭和15>年~
、元宮崎県立日南病院院長 宮崎県出身)をモデルに作られた曲です。
柴田先生は、さだまさしさんの故郷にある長崎大学医学部卒業で、二人は旧知の仲で、飲み友達だそうです。
その柴田先生のケニアでの話をもとに、日本に残した恋人に充てた手紙という形式にして、雄大なケニアの情景をバックに、自分の生き方、生きる決意を、さだまさしさんが歌にした名曲です。
ただし、この曲には、実名は出てきません。
(以下、歌詞の部分を「♪ ♪」の形で紹介します。)
「♪
この偉大な自然の中で 病いと向かい会えば
神様について ヒトについて 考えるものですね
やはり 僕たちの国は残念だけれど
何か 大切な処で 道を間違えたようですね♪」
(「風に立つライオン」 作詞・作曲・歌 さだまさし より)
この曲に惚れ込んだ、俳優の大沢たかおさんが、さだまさしさんに、小説化・映画化を熱望しました。
大沢さんの願いを受けて、さだまさしが、小説「風に立つライオン」を発表したのは2013(平成25)年のことです。この小説では、主役の名前を豊田航一郎としています。
航一郎は、長崎の大学病院からケニアの研究施設・熱帯医学研究所に派遣された日本人医師です。
周辺で戦闘が続くこのアフリカの地で、心に傷を負った元少年兵ンドゥングと出会った彼は、医師としての生き方を見つめ直します。
銃や地雷で負傷した人々が、次々に運び込まれてくる医療現場で仕事をし、アフリカの大地に向かって「ガンバレッ」と叫びながら、自分を鼓舞し前向きに生きる航一郎でしたす。
航一郎は、「ガンバレ」と時々叫びます。それは、人に言うのではなく、自分が悲しいとき、悔しいとき、迷ったときには、いつも広大なケニアの夜空に向かって叫ぶ言葉でした。
そして、航一郎が診察した中の1人のケニアの少年ンドゥガは、航一郎から「志という心のバトン」を受け継ぎ、苦労して医者になります。
そして、2011(平成23)年。大震災に襲われた日本の被災地を、医師となったンドゥングは、恩返しのために訪れ、ボランティアで診療します。
震災の地で、危険を顧みず診療ボランティアをするンドゥングの「心のバトン」は、被災者たちに受け継がれていったのです。
<小説:「風に立つライオン」(作:さだまさし1 幻冬舎刊)>
そして、2015(平成27)年に、映画「風に立つライオン」が誕生しました。
長崎の大学病院からケニアの研究施設・熱帯医学研究所に派遣された日本人医師・航一郎の役を、大沢たかおさんが演じます。
銃や地雷で負傷した人々が次々に運ばれてくる医療現場で仕事をし、アフリカの大地に向かって「ガンバレッ」と叫びながら、自分を鼓舞し前向きに生きる航一郎を、大沢さんが熱演しています。
航一郎と共に、ケニアで働く看護師・和歌子に石原さとみさん、日本に残した恋人の貴子役に真木よう子さん、さらに、萩原聖人さん、鈴木亮平さん、石橋蓮司なども出演します。
現地ロケを長期に渡って敢行したケニアの美しい自然をバックに、希望と奇跡のドラマが、スクリーンに展開されていきます。
「♪
診療所に集まる人々は 病気だけれど
少なくても 心は我々より 健康なのですよ
僕はやはり 来てよかったと 思っています
辛くないと言えば嘘になるけど 幸せです♪」
(「風に立つライオン」 作詞・作曲・歌 さだまさし より)
「風に立つライオン」は、歌も小説も映画も、それぞれに、私たちの胸に突き刺さり、そして、自分に「ガンバレ」と大声で言いたくなります。
いじめ、不登校、殺人、ネット流出、大震災、原発事故、高齢者問題---、
確かに日本は、どこか大切な処で道を間違えたのかも知れません。
そして、日本人の心は、ケニアの人たちより病気なのかも知れません。
この「風に立つライオン」は、ケニアの話のようで、実は日本の話にもなっているのです。
アフリカの草原で、強い風をタテガミに受けながらも、堂々と立ち上がる。そんなライオンの生き方に憧れるのは、私だけではないと思います。
蛇足ですが、中央競馬の馬に「カゼニタツライオン」という馬がいます。名前が好きで何度か買って、「ガンバレ」と応援してみましたが、見事に負けてしまいました。<笑>)
最後に、次の歌詞を紹介します。
「🎵
僕は よどみない生命を 生きたい
キリマンジャロの白い雪
それを支える紺碧の空
僕は 風に向かって立つ ライオンでありたい🎵」
(「風に立つライオン」 作詞・作曲・歌 さだまさし より)
<アフリカ最高峰 キリマンジャロ>
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