2015年5月30日土曜日

1本のペンで世界を変えられる! ~ノーベル平和賞・マララの言葉

 「無学、貧困、そしてテロリズムと闘いましょう。本を手に取り、ペンを握りましょう。それが私たちにとってもっとも強力な武器なのです。
  1人の子ども、1人の教師、1冊の本、そして1本のペン、それで世界を変えられます。(One child, one teacher, one book, one pen can change the world.)
 教育こそがただ一つの解決策です。」

 これは、2014年に、史上最年少(17歳)でノーベル平和賞を受賞した、パキスタン人の少女マララ・ユスフザイ(Malala Yousafzai)さんが、前年の2013年7月にニューヨークの国連本部で演説した内容の一部です。

 中東、ウクライナ、南シナ海、アフリカ、朝鮮半島、そして東シナ海。世界には、相変わらず戦争の匂いが漂っています。そして、日本周辺も例外ではありません。

 今、本当に大切なものは何なのかを考えるため、勇気ある少女・マララのことを紹介したいと思います。

<1本のペンが世界を変える>




 マララ・ユスフザイさんは、1997(平成9)年7月12日にパキスタンのミンゴラで生まれました。

  父親のジアウデイ・ユスフザイさんは、私立の女学校を経営していました。マララは、父親の影響を受けて、学校に通い医者を目指していました。

 2007(平成19)年、パキスタン・タリバン運動(TTP)が、ユスフザイ一家が住むスワート県の行政を掌握して、恐怖政府を始めました。
 TPPは、「女性に教育は必要ない」と主張し、女性が教育を受けたり、女性教育を推進するものの命を狙うようになりました。

 2009(平成21)年、マララ(11歳)は、TPPの恐怖政治の下で生きる人々のようすを、BBC(イギリス公共放送)の依頼で、ペンネームで「グル・マカイの日記」というブログを書くようになりました。

 パキスタン初の女性首相であり暗殺されたベーナズィール・ブット氏(1953年~2007年)の影響を受けていたマララは、ブログで、TPPによる女子校の破壊活動を批判し、女性教育の必要性や平和を訴え、メディアに注目されるようになります。
 
 「過激派は本とペンを恐れます。教育の力は彼らをおびえさせます。彼らは女性が怖いのです。女性の声の力が彼らをおびえさせるのです」
(マララの言葉)

 2009(平成21)年、TTPがパキスタン軍の大規模な軍事作戦によって追放された後、パキスタン政府は彼女の本名を公表しました。

 マララは「勇気ある少女」として表彰され、その後、パキスタン政府主催の講演会にも出席し、女性の権利などについて語りました。
 しかし、このことでTPP(タリバン)に命を狙われることになります。

 2012(平成24)年10月9日、マララが15歳の時に、中学校のスクールバスで帰る途中に、TPPに襲撃され、頭と首に計2発の銃弾を受け重傷を負いました。一緒にいた2人の女学生も負傷しました。

 15歳の少女を襲撃したTPPの行為は、パキスタン国内だけでなく、世界各国から批判を受けますが、TPP(タリバン)は、「女が教育を受ける事は許し難い罪であり、死に値する」と正当性を主張して、徹底抗戦の構えを示しました。

 マララは、治療と安全を図るために、家族とともにイギリス・バーミンガムへ移送され、手術を受けました。

 2013(平成25)年、国際連合はマララの誕生日の7月12日を、「マララの日」とし、同日、ニューヨーク国連本部でマララは演説し、最初に紹介した「1本のペンで世界を変えられる」と訴えました。

 この時のマララの演説を紹介します。

 2012年10月9日、タリバンは私の額の左側を銃で撃ちました。私の友人も撃たれました。彼らは銃弾で私たちを黙らせようと考えたのです。
 でも、彼らは失敗しました。私たちが(負傷して)沈黙したそのとき、数えきれないほどの声が上がったのです。

 テロリストたちは私たちの目的を変更させ、志を阻止しようと考えました。しかし、私の人生で変わったものは何一つありません。 私の中で、弱さ、恐怖、絶望が死に、強さと力、そして勇気が生まれました。

  私はこれまでと変わらず<マララ>のままです。そして、私の志もまったく変わりません。私の希望も、夢もまったく変わっていないのです。」
 (2013年7月 マララの国連演説より)

<国連本部(アメリカ・ニューヨーク>

 

 
 
 一方で、マララは、アメリカのパキスタンに対する軍事干渉には批判的な見解を示し、国連演説の後の2013年10月に、アメリカのオバマ大統領と面会した際には、無人機を使ったアメリカのテロ掃討作戦をやめるよう求めました。

 さらに、本の収益や寄付金などをもとに、2013年に「マララ基金」を設立し、紛争地の子供たちや少女たちの就学支援などを、積極的に行っています。

 そして2014(平成26)年、マララは17歳という史上最年少の若さでノーベル平和賞を受賞しました。

 マララのノーベル平和賞の受賞演説から、紹介します。

 「なぜ、強いといわれる国々は、戦争を生み出す力があるのに、平和をもたらすことには弱いのでしょうか。
 なぜ、銃を与えることは、とても簡単なのに、本を与えることはとても難しいのでしょうか。
 なぜ戦車をつくることは、とても簡単で、学校を建てることはとても難しいのでしょうか。

 この21世紀には、全ての子供たちに質の高い教育を与えられなければなりません。私たちは動くべきです。待っていてはいけない。動くべきなんです。

 みなさん、これで終わりにしましょう。
 誰もいない教室も、失われた子供時代も、無駄にされた可能性も。

 戦争で子供の命が失われることも、子供が学校に通えないことも、これで終わりにしましょう。私たちで終わらせましょう。」 
(2014年12月10日 ノルウェーでのマララのノーベル平和賞受賞演説より抜粋)

 マララは、TPPの暗殺予告によりパキスタンに帰れずに、外国で活動しています。
 彼女は、ノーベル平和賞の賞金をマララ基金に寄付し、子供たちや少女を救済する活動を続けています。いわば、「マララの平和のための戦い」は続いています。

 マララの言葉の中には、たくさんのダイアモンドが詰まっていると思います。その輝きのうち、3つを紹介します。

 まず1つめは、私の身内を含む、不登校や学校に行きたくない子供たちに聞いてほしい言葉です。

「 私たちは学校が大好きでした。しかしタリバンに邪魔されるまで、教育の大切さに気づくことができませんでした。
 学校に通って、本を読み、宿題をすることは、ただの時間つぶしではありません。それは私たちの未来だったのです。」

 私にも経験がありますが、学校は、弱い子供にとっては「牢獄」であり「地獄」です。
 でも、そこは本当は、「忍耐」と「自分の未来」を学ぶ場所なのです。気づいてほしいと思います。


 2つ目の言葉のダイアモンドは、マララの「本とペンの非暴力の戦い」についてです。彼女は国連演説の中で、こう言っています。

「 私は、自分を撃ったタリバン兵士さえも憎んではいません。私が銃を手にして、彼の前に立ったとしても、私は彼を撃たないでしょう。
 これは、私が預言者モハメッド、キリスト、ブッダから学んだ慈悲の心です。
 これは、キング牧師、ネルソン・マンデラ南アフリカ元大統領、そしてムハンマドから受け継がれた変革という財産なのです。
 これは、私がガンディー、バシャ・カーン、そしてマザー・テレサから学んだ非暴力という哲学なのです。
 そして、これは私の父と母から学んだ「許しの心」です。

 私の魂が私に訴えてきます。
 『穏やかでいなさい、すべての人を愛しなさい』と。」

 日本は戦後70年、平和憲法のもとに「戦争を放棄」して、このマララと同じ方法で、世界で活動してきたのではないのでしょうか?。
 日本も私たちも、マララのように、これからも非暴力で、本とペンを武器に、がんばりたいものです。


 3つ目の言葉のダイアモンドは、私たち一人ひとりの「勇気」についてです。

「 私は(TPPの襲撃で)すでに死に直面しました。これからは、私、マララの第二の人生です。恐れてはなりません。臆病になれば、前に進むことができなくなってしまいます。
 本を取り、ペンを手に取りましょう。それが私たちの最も強力な武器です。
(Let us pick up our books and our pens, they are the most powerful weapons.)」


 おしまいに、「マララ」という名前について、紹介します。

 マララとい名前は、西アジアのジャンヌ・ダルクともいわれる「マイワンドのマラライ」(19世紀のイギリス・アフガニスタン戦争の英雄)にちなんで名付けらと、本人が語っています。

 「マララ」という言葉は、「悲しみにうちひしがれた」とか「悲しい」という意味です。
 しかし、マララとその家族は、そこに「幸福」の意味を加えようとしています。
 マララの祖父は、いつもマララのことを、「世界で最も幸せな少女」と呼んでいるそうです。

 1人の少女のブログが、勇気が、世界を変えつつあります。
 このブログを読んでくださっているあなたも、書いている私も、この21世紀のジャンヌ・ダルクの生き方と言葉に、勇気をもらい「少しづつでもチェンジ」して、夢を現実にしていきましょう。

 最後に、もう1つ、マララの言葉を紹介します。

 今日の夢が、「明日の現実」になると信じています。
 私たちの夢を、「明日の現実」にしましょう。
(I believe that today’s dreams become tomorrow’s reality. And let us make our dreams become tomorrow’s reality.)」

<マララ箸「わたしはマララ」(学研)>

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