2015年5月17日日曜日

「巨大地震と火山噴火」の連動の歴史<日本編> 富士山・箱根山は?


 前回は、1950(昭和25)年以降の60年間で、世界で起こったM(マグニチュード)9.0以上の「超巨大地震」が6回起こり、そのうち、「東日本大震災」以外の5回は、近くの火山が大噴火を起こしたこと(連動噴火)を紹介しました。

 連動噴火の確率は、東日本大震災を除くと5/5で100%、東日本大震災を入れると(今のところ)5/6で83%ということになります。

 問題は、今後、「東日本大震災」後の日本でも、連動噴火が起こるかどうかです。

 前回は、20世紀後半以降の、世界の「超巨大地震と火山噴火」の関係を見ました。
 今回は、有史以来の日本で起こった「巨大地震と火山噴火」の関係を歴史的に調べてみたいと思います。


<桜島の噴火 (夜間)>




 日本でM9.0以上か同規模と推定できる地震は、記録が残っている7世紀(601年~700年)以降、2015年4月までで、4回起こっています。

 最も古い超巨大地震は「白鳳(はくほう)地震」と呼ばれ、飛鳥時代の684(白雉35)年11月26日に起こった「南海トラフ巨大地震」と推定されるものです。
 「日本書記」に記録があり、四国の土佐(高知県)や伊予(愛媛県)などで大きな被害があったことが記録に残されています。

 地震当日に「伊豆大島(東京都)」が噴火し、地震の5ヶ月後には、「浅間山(長野県・群馬県)」や「焼岳(長野県・岐阜県)」も噴火したと伝えられています。


 日本で起きた2度目の超巨大地震は、「貞観(じょうがん)地震」で、平安時代初期の869(貞観11)年7月9日に、東日本大震災とほぼ同じ、東北地方の太平洋沖を震源とした地震が発生し、大規模な津波が発生しました。「日本三代実録」に記載があります。

 貞観地震の1年11ヶ月後の871年に、「鳥海山(秋田県・山形県)」で溶岩流を伴う大噴火がありました。


 3度目の超巨大地震は、「宝永(ほうえい)地震」で、江戸時代中期の1707(宝永年4)年10月28日に、南海トラフ全域(東海~九州の南海上)を震源とする日本史上最大級の地震とされ、M9.1~M9.3と推定されます。

 西日本から東海までの太平洋岸全域に、最大25mを超える巨大津波が押し寄せたと推定され、最大震度7で、5000人~2万人の死者を出す甚大な被害が出ました。

 宝永地震の49日後に、「富士山(山梨県・静岡県)」の大噴火(宝永大噴火)が起こりました。
 また、1年2ヶ月後に「浅間山(長野県・群馬県)」が噴火し、その2ヶ月後には「阿蘇山(熊本県)」が、さらに2ヶ月後には「岩木山(青森県)」と「三宅島(東京都)」が、それぞれ噴火しました。

 地震からわずか1年半で、富士山を含む5つの火山が噴火したことになります。


 最後の4回目は、もちろん、2011(平成23)年3月11日に、東北の太平洋沖を震源として起きた「東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)」です。

 この地震の規模は、M9.0と推定され、東北から関東の太平洋岸にかけて巨大な津波が押し寄せ、最大津波高40m、最大震度7、死者・行方不明者は18470人にもなりました。

 また、この地震・津波により、「東京電力福島第一原子力発電所」の1号炉・2号炉・3号炉が「炉心融解(メルトダウン)」して、大量の放射性物質が漏洩しました。     4年たった今でも、炉心の被害状況の把握さえ、できていません。

 この事故は、「国際原子力事象評価尺度」で最悪のレベル7(チェルノブイリ原子力発電所事故と同等)に位置付けられています。

 東日本大震災のあとの人的被害が出た火山噴火としては、2014(平成26)年9月27日の「御嶽山(長野県・岐阜県)」が水蒸気爆発して、噴石で死者・行方不明者63人が出たものがありますが、これは火山噴火としては小規模なものです。

<御嶽山の2014年の噴火>



 まとめると、日本の過去4回の「超巨大地震」のうち、2回は「東北地方太平洋岸沖」が震源で、残りの2回が「南海トラフ」を震源とするものです。

 これら4回の超巨大地震のうち、「東日本大震災」を除く過去3回の地震では、震災後、2年以内に大きな火山噴火が起きています。

 前回、調べた世界の巨大地震と合わせると、9回の超巨大地震のうち、東日本大震災を除く8回の超巨大地震のあと3年以内に、大きな火山噴火が起こったことになります。

 その確率は8/9で、89%になります。
 例外の1回は、「東日本大震災」だけです。

 この連動噴火が、3年以内ではなく、5年以内(~2016年)、10年以内(~2020年)になっても、何百年、何千年単位で活動する「火山活動」からすれば、少しも不思議ではありません。

 昔は、富士山などの活動していない火山を、「休火山」とか「死火山」とか言っいましたが、今は「1万年以内に噴火したことがある火山」は、すべて活火山と呼ぶ」そうです。
 つまり、富士山も箱根山も「活火山」なのです。


 日本には110の火山があると言われていますが、2011年の「東日本大震災」以降、御嶽山や箱根山の他にも、阿蘇山・蔵王・桜島など、全国各地の火山の活動が活発化しています。

 ちなみに、今、箱根山で起こっている地震は「火山性地震」と言われていますが、
これは水蒸気の動きなどで起こるものが多いそうです。
 一方、マグマが上がってくると、「火山性微動」という、小刻みな揺れが多くなるそうです。

 火山の噴火の前兆は、ある場合もない場合もありますので一概には言えませんが、一つの目安としては、「火山性地震」が「火山性微動」に変わると危ないそうです。

 他にも、「地面が膨らんだり」(国土地理院が5月16日に最大12cm隆起と発表)、「揺れや蒸気噴出が一時的に減る」のも危険信号だそうです。


<浮世絵版画 「凱風快晴(赤富士)」 葛飾北斎作>



 最後に、これから起こることの参考になるかも知れないので、2011年の「東日本大震災」と同じ「東北太平洋岸沖」を震源として1100年以上前に起こった、869年の超巨大地震「貞観地震」の前後の地震・火山の動きを紹介します。

・864(貞観6 貞観地震の5年前)年6月  
 富士山で大量の溶岩流出を伴う記録上最大の「貞観大噴火」が発生。この時の噴火で、「青木ヶ原樹海」や「富士五湖の一部」が生成された。

・864年 阿蘇山噴火

・868(貞観10 貞観地震の1年前)年7月 播磨国(兵庫県)地震でM7台の地震 (*阪神大震災と同震源・同規模?)

・869(貞観11)年7月9日 東北太平洋岸沖を震源とする「貞観地震」発生。

・871(貞観13 貞観地震の2年後)年に、「鳥海山(秋田県・山形県)」で溶岩流を伴う大噴火発生。

・878(元慶2 貞観地震の9年後)年10月28日 M7.4の「相模・武蔵地震」が発生(場所的には首都直下型地震?)。

・886(仁和2 貞観地震の17年後)5月24日 伊豆諸島で噴火(房総で降灰)

・887(仁和3 貞観地震の18年後)8月22日 M[8.0~M8.5で南海トラフが震源と推定される「仁和地震」が発生。津波と揺れで死者多数。
この地震で、「八ヶ岳(山梨県・長野県)」が山体崩壊。


「富士山(貞観)大噴火→兵庫県地震→東北大震災(貞観地震)→関東南部地震→南海トラフ大地震」

 1100年前のこの流れを見ると、不気味ですね。

 必要以上に心配する必要はありませんが、東日本大震災からわずかに4年しか経っていない今は、火山活動にも地震活動にも、要注意の「黄色信号」の時期であることは、間違いないようです。

 もしものことも考えて、備えをしながら、地震国・火山国の日本で生きていくのが、日本人の宿命のようですね。


<教訓>

・「天災は 忘れた頃に やってくる」
(昔から日本で語り継がれる教訓)

もうひとつ、過去の歴史から言えるとしたら、次の教訓です。
・「震災と 火山噴火は 連動注意」


 

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