2015年5月23日土曜日

イルカ いないか? 水族館

 日本の水族館の花形、イルカショーのイルカ調達がピンチです。
 「水族館のイルカがいなくなるかも?」と言われています。

 「世界動物園水族館協会(WAZA)」が、日本の伝統的な追い込み漁が残酷で、この方法により捕獲したイルカを購入するのは倫理規定に違反するとして、日本の水族館・動物園が購入することの中止を求め、除名勧告をしていました。

 この問題で、2015年5月20日に、「日本動物園水族館協会(JAZA)」は、渋々WAZAの勧告を受け入れて、追い込み漁で捕獲したイルカの購入を中止すると発表しました。
 
 JAZA加盟の施設は、動物園が89施設、水族館が63施設の152施設ですが、このうち142施設が、今回の投票し、残留99、離脱43で、WAZAへの残留を決定し、追い込み漁のイルカ購入を中止することになりました。

 WAZAに残留しないと、トラやサイなど、他の動物の「世界の動物園・水族館」との取引・貸し借りができなくなるので、イルカを犠牲にした形の苦渋の選択です。


<イルカショー>



 現在、日本でイルカのいる水族館は34施設、イルカの数は287頭と言われています。(とうことは、ほとんどのイルカのいる水族館が反対(離脱)に投票したようですね。)

 日本の34水族館のうち、イルカ繁殖の経験のある施設は12施設で、少なくても18施設の168頭は、和歌山県太地町から「追い込み漁」で捕獲したものを購入したそうです。
 公表していない施設もありますが、日本の水族館にいるイルカ全体の90%近くが、和歌山の「追い込み漁」で捕獲したもので、繁殖は12~13%にすぎないそうです。

 一方、アメリカ合衆国のイルカ416頭のほとんどが繁殖によるもので、この20年間、野生のイルカを捕獲したものを水族館に入れた例はないそうです。

 では、なぜ日本の水族館で繁殖をあまりしないのかというと、イルカの繁殖には大規模な施設が必要で、その2年後の生存者率は10%程度と難しいそうです。
 さらに、イルカショーのイルカの大半は、調教しやすいメスで、オスが少ないことも原因です。

 一方、日本の伝統漁法の「追い込み漁」でとったイルカは、1頭100万円程度で購入でき、比較的容易に手に入れることができるそうです。(イルカの年間の飼育料も、1頭あたり年間100万円だそうです。

 もちろん、根本には、イルカ・クジラに関する価値観・文化の違いがあります。
 日本では、古来より、イルカ・クジラを食用や油・肥料とする漁が、伝統漁法として行われています。

 その一つが「追い込み漁」で、数十隻から百隻の船で、沖合から魚・イルカ・クジラ等を、音や振動で入江や湾に追い詰めて捕獲する方法で、昔は全国各地で行われていましたが、今は和歌山県太地町だけで行われています。

 2013(平成25)年の記録では、日本のイルカ捕獲量2832頭のうち、1239頭が和歌山県太地町の「追い込み漁」で捕獲されました。
 このうち172頭(13.9%)が、日本国内や中国(WAZA未加入)の水族館・動物園に、1頭100万円前後で売られました。

 欧米では、イルカやクジラを食する習慣がなく、油をとるためだけに殺害されていましたが、油が油田などから大量に取れるようになって、保護運動が盛んになりました。
 特に、和歌山県太地町の「追い込み漁」を撮影した映画「ザ・コーブ」が、アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞してからは、批判の的にされるようになりました。

<野生のイルカ>



 生命の大切さは共感できますが、人間が生きていく以上、他の命を食べていかなければならないのも、悲しい現実です。
 西欧でよく食される、牛や豚、羊などは殺害してもよくて、イルカやクジラはダメというのは、違うような気がします。

 ちなみに、イスラム教徒はコーランの教えに従い不潔・不純な「ブタ」を食べませんし、ヒンズー教徒は「牛」を聖獣と考え食べません。
 日本でも、江戸時代は仏教の影響で、獣(けもの)を食べない習慣があり、ウサギは鳥(それで1羽、2羽と数えます)、イノシシは魚(山鯨)と、無理やり呼んで、ごまかして食したそうです。

 そうは言っても、「追い込み漁」によって捕獲されたイルカを、水族館で購入してはいけないことになった以上は、多くの水族館が共同で「繁殖施設」を整えるなどの方法をとらないと、数年後には水族館からイルカが消えて、本当に「イルカいないか水族館」になってしまいそうです。

 イルカの平均寿命は30年とも50年とも言われていますが、水族館での寿命は4年~7年程度だそうです。
 大切に飼って、平均寿命を伸ばして、日本の水族館の「イルカの灯」を、消さないでほしいと思います。

 イルカには、「溺れていた人間を助けてくれた」とか、「サメの襲撃から人間を守ってくれた」など、人間のパートナーとしての逸話が多く残されています。
 ぜひ、大切にしたい友達だと思います。



<おまけ イルカの豆知識>

(1) イルカとクジラは、生物学的には同じ種で、区別はないそうです。一般的には、4m以上を「クジラ」、4m未満を「イルカ」と呼んでいます。
 英語でもほぼ同じ大きさで区分し、大きいものを「Whale」、小さいものを「Dolphin」
と呼びます。

(2) 「なごり雪」などで有名な歌手の「イルカ」(本名 神部としえ)さんは、学生時代に、ギターケースを抱えて帰宅する後姿が、イルカに似ているとつけられたニックネーム「イルカ」を、芸名にしたそうです。

(3) 飛鳥時代の645(大化元)年に、「大化の改新」で中大兄王子(のちの天智天皇)に斬首された蘇我入鹿(そがの いるか)の名前は、藤原氏が後世につけた蔑名だという説があります。
 一方で、超人間的な能力をもった「イルカ」への畏敬の念を込められた名前だという説もあります。



<一句>

・イルカまで 紛争のネタ ふん・そうか

・水族館 命運握る イルカショー 

・入ろうか イルカいないか? 水族館 

 

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