2015年4月4日土曜日

エース、黙って降板  大越健介(NHK)前キャスターの生きざま   


 3月27日、金曜日の夜、テレビ朝日系「報道ステーション」で、古館伊知郎キャスターとコメンティターの古賀茂明氏が、古賀氏の降板問題で大議論を繰り広げた夜、NHKの「ニュースウォッチ9」では、大越健介キャスターが、5年間務めた番組を静かに降板しました。

 今回は、NHKでは珍しい「原発推進などの政府の政策に物言うキャスター」として知られ、NHKの籾井会長や安倍政権から疎まれて左遷されたとの噂がある、大越健介さんについて、ブログで紹介します。

 大越キャスターの降板については、噂どおり左遷なのかどうかはわかりません。

 ただ、少なくても、降板時にニュース番組の時間を使って大騒ぎした古賀茂明氏や、あわててその話を遮った古館キャスターより、言いたいことがあっても文句を言わず静かに降板した大越さんの方が、桜の散り際としては、はるかにりっぱだと思います。

 大越健介さんのNHKキャスターブログの「最終回」の一部を紹介します。

「  ぼくは、ニュースの前後に、できるだけコメントを発するようにしていました。
 視聴者のみなさんとともに、その意味を共有し、問題を提起するためです。
  <公共放送はこの程度までしかできない>のではなく、<公共放送だからこそ、言うべきことがある>という気持ちで、言葉を紡いできたつもりです。
 そして今、そのことに悔いはありません。」
(大越健介氏ブログ「現代をみる」より)

 大越さんは、プライベートでよく、こんなことを言っていたそうです。
「BBC(イギリス)は、公共放送でも政権にもの申す。NHKも政権の犬になったらおしまいだ。」

 公正中立を第一とするジャーナリストの姿勢としては、政権と距離をおいて、一般の国民・市民の側に立つのは、正しいと思います。

  NHKの大越健介さんをはじめ、「報道ステーション」の恵村順一郎氏(朝日新聞論説委員)や古賀茂明氏(元通産官僚)、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏など、この春、安陪内閣の政策に批判的な(あるいは問題提起をしていた)キャスターやコメンテーターが、次々とテレビ画面が消えていくように思えますが、気のせいでしょうか。

<写真:NHK放送センター(東京・渋谷>



 大越健介(おおごし けんすけ)さんの略歴を紹介します。
 
 1961(昭和36)年8月25日、新潟県三島郡寺泊町(現 長岡市)生まれ。
 新潟県立新潟高校から東京大学(文Ⅲ)に進学します。

 東京大学のエースとして「東京6大学リーグ」に出場し、通算50試合で8勝27敗、防御率3.52、142奪三振の成績を残しています。
 プロ野球に進んだ選手も多い東京6大学リーグでの、最弱・東大野球部の投手としては、すごい成績だと思います。

 大越選手自身は、「8勝も、東大としてはまずまずだと思う(東大野球部歴代5位タイ)が、それよりも27敗を誇りに思う。よく、ここまで使っていただいた。」と話しています。
 勉強もスポーツも超一流の学生が、負けたことを誇りに思うと言った言葉が、印象に残ります。

 その後、東京大学文学部を1985(昭和60)年に卒業し、NHKに入局します。
 岡山局に配属され、「瀬戸大橋開通」を取材したあと、本部報道局政治部に配属され、政治記者として、自民党などを取材し活躍します。

 2005(平成17)年にワシントン支局に赴任し、2007(平成19)年からはワシントン支局長になります。この間、ブッシュ大統領の「テロとの戦い」や、黒人初のオバマ大統領の当選などを取材します。

 2009(平成21)年に帰国し、2010(平成22)年3月に「news Watch 9」のメインキャスターに就任し、東日本大震災などを伝え、2015(平成27)年3月で降板しました。

  プライベートでは、2014(平成26)年末、初孫となる女の子が誕生しています。NHKキャスターとしての最後のブログのタイトルは「じーじの仕事」となっています。

<桜に吹く花散らしの風>



 最後に、ニュースウッチの大越健介キャスターの番組最後のあいさつの一部を紹介します。

「 ゆっくりとご挨拶をしたいところでしたけど、なかなかそうはさせてくれないのが、ニュースの現場だと思います。
 
 でもね、それで良かったんだというように私は思います。
 私たち3人(井上あさひ、広瀬智美両キャスターも降板)、それぞれ進む道は違いますけれども、 本来、記者である私も含めて、いずれまた別の機会に画面を通して、みなさんにお目にかかりたいと思います。

 それまでの間、しばしの間、お別れです。 さようなら。
 そして、またいずれお会いしましょう。 長い間、ありがとうございました。」

 
 今は、大越キャスターには、アゲンストの風が吹いています。しかし、大越キャスターが、かつて東京6大学野球で27敗を誇りにしたのと同じように、この5年間の「ニュース ウォッチ」の真摯な報道は、みんなの記憶に残る「誇りある日々」だと思います。

 今回、キャスターというマウンドを降りるエース大越投手が、いつか、また、登板して、元気な顔をテレビで見せてほしいと思っています。


短歌: 花散らす 風に笑顔で さよならを 言う人今は 沈黙守る




0 件のコメント:

コメントを投稿