4月5日11時すぎ、徳島空港で、JAL旅客機と車が滑走路でぶつかりそうになる事態が発生し、パイロットのとっさの判断でタッチアンドゴーをして、危機一髪で大事故が回避されました。
この時、管制をしていたのは海上自衛隊で、管制官は「日曜日だから」という理由で、通常の4人から1人になっていたそうで、その1人が空港内に車両を進入させていたのを忘れていたそうです。
あと十数秒遅れたら、大事故になっていました。
このニュースを聞いて、不思議に思ったことがあります。
なぜ、民間機が発着する「徳島空港」の管制を自衛隊がやっているのでしょうか?
いちばん旅客数が多い日曜日に、管制官が1人だったのは、自衛隊の訓練が休みだったからだと思えるのですが。
<徳島空港と海上自衛隊の管制塔>
疑問を解決するために、徳島空港の歴史を調べてみましょう。
徳島空港(徳島県板野郡松茂町)は、徳島飛行場と言うのが正式名で、愛称は「徳島阿波おどり空港」と言います。
太平洋戦争が始まった1941(昭和16)年に、大日本帝国海軍の徳島海軍航空隊の飛行場として開港しました。
戦争中は、海軍飛行偵察員の訓練基地として利用されていましたが、1945(昭和20)年の終戦とともに、アメリカ軍に接収されました。
戦後、1958(昭和33)年に海上自衛隊の徳島航空隊が発足し、対潜哨戒機(潜水艦に対応する航空機)の訓練基地として、徳島空港が再び利用されるようになります。
1967(昭和42)年からは、民間も利用する空港となります。
2015年4月現在、事故が起こりそうになった日本航空<JAL>をはじめ、全日空<ANA>、日本エアコミュータ<JAC>の民間3社が、徳島空港を利用して定期便を運航しています。
一方、管制をしている自衛隊は、空港全体の80%以上の面積を管理し、海上自衛隊の飛行要員を養成する「徳島教育航空群」に加え、2010(平成22)年からは、陸上自衛隊も空港を使用しています。
つまり、徳島空港は、もともと「海軍→自衛隊」の訓練基地であった空港を、あとから民間が共同で利用することになった、いわゆる「自衛隊・民間共同利用」の空港なのです。
だから、管制は海上自衛隊が担当しているのです。
<徳島空港の地図>
それでは、自衛隊の管制は、徳島空港だけの特殊事情なのでしょうか?
全国の航空管制官のいる71空港(飛行場)を見てみましょう。
まず、国土交通省航空局の管制官がいる空港は、東京国際空港(東京都・羽田)をはじめ、成田国際空港(千葉県)、中部国際空港(愛知県)、大阪国際空港(兵庫県伊丹市)、関西国際空港(大阪府)、福岡空港(福岡県)など、33空港です。
次に、自衛隊管制官がいるのは、徳島空港をはじめ、新千歳空港(北海道)、名古屋飛行場(愛知県)、小松空港(石川県)、米子空港(鳥取県)など、34空港・飛行場です。
最後に、アメリカ軍の管制官がいるのは、横田飛行場(東京都)、岩国飛行場(山口県)、嘉手納飛行場、普天間飛行場(以上 沖縄県)の4飛行場です。
割合にすると、国土交通省管制と自衛隊管制の空港・飛行場が、ほぼ半々ということになります。
空港・飛行場の歴史や防衛上の理由による所が大きいのでしょうが、自衛隊管制は徳島空港だけでなく全国的なものです。
ただし、自衛隊の話では、管制官1人が認められているのは、徳島空港だけということです。その徳島空港も、今回のミスを受けて、複数の管制官の体制にするということです。
せっかくなので、「徳島阿波おどり空港」について、観光情報を少し紹介します。
2015年4月現在、徳島空港で運行している定期便は、「日本航空<JAL>(東京=徳島間 1日7往復)」をはじめ、「全日空<ANA>(東京=徳島間 1日5往復」、{日本エアコミュータ<JAC>(福岡=徳島間、1日2往復)」の14往復が運航されています。
このうち東京へは12往復出ているので、日帰りは十分可能です。
ちなみに、徳島空港からは、徳島市内へシャトルバスが到着便に合わせて出ていて、所要時間は30分ほどです。
徳島市内では、有名な阿波踊り(8月12日~15日)の時期以外でも、「毎日おどる阿波踊り」の体験ができる「阿波おどり会館」という施設があります。
渦潮で有名な「鳴門海峡」や四国八十八ヶ所の1番札所「霊山寺」(鳴門市)へは車で約30分ほどです。
また、「徳島阿波おどり空港」の民間ターミナルビル内には、「徳島ラーメン」や「セルフうどん」の店、ノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏ゆかりのLEDの装飾、阿波踊りの陶版画、「空の境界」などのアニメポスターやグッズが展示・販売されている時期もあります。
<徳島空港内のLED照明>
最後に徳島空港の役割を、このブログのテーマの一つ、防災面で紹介します。
政府の計画では、「南海トラフを震源とする大地震」などの大災害発生時、徳島空港は、四国各地へ救援に向かう航空部隊の前線基地として位置づけられています。
その理由の一つは、関西方面から四国への入口にあたる地理的要因ですが、もう一つは、海上・陸上の両自衛隊の航空機やヘリプターなどの基地であることです。
全国の自衛隊管制官の空港が、より安全で、自衛隊と民間が相互に協力して「空の安全」や「防災」を担ってくれることを期待したいものです。
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