2015年4月11日土曜日

「本屋大賞の仕組み」と2015年受賞者上橋菜穂子さんの話

 本屋大賞が話題になっています。
 2015年は、上橋菜穂子さんの「鹿の王」が受賞しました。

 本屋大賞は、「全国の書店員が選んだ いちばん!売りたい本」のキャチフレーズで有名になり、今では受賞作は、芥川賞や直木賞受賞作より売れると言われています。

 本屋大賞は、2004(平成16)年に設立されたNPO(特定非営利活動)法人「本屋大賞実行委員会」が運営する文学賞で、2015年で12回目となります。

 他の文学賞のように、出版社や専門家が決めるのではなく、全国の書店店員が投票で、ノミネート作品も大賞作品も決めるため、いわゆる「根回し」や「すりあわせ」のない開かれた賞と言われています。

 大賞は、「過去1年間に刊行された日本の小説」が対象で、1次審査は、全国461書店の580人が3冊ずつ投票して、上位10作品のノミネート作品を決めます。

 2次審査は、ノミネート作品10作品全部を詠んだ書店店員が、理由を書いて1位から3位まで投票します。(2015年は286書店342人が投票)
 1位3点、2位2点、3位1.5点の得点を集計して、最高得点を取った作品が大賞となります。

 2015年は、383点を獲得した上橋菜穂子氏「鹿の王」(KADOKAWA)が大賞を受賞しました。
 2位は西加奈子氏の「サラバ!」(小学館)で310点、3位は辻村深月氏の「ハケンアニメ!」(マガジンハウス)で309.5点でした。

 過去の大賞作品は、第3回(2006年)の「東京タワ ~オカンとボクと時々オトン」(リリー・フランキー)や、第7回(2010年)の「天地明察」(沖方丁)など、多くが映画やテレビドラマ化されています。

<本屋大賞ノミネート作品が並ぶ本屋さん>

 

 2015年の大賞を受賞した「鹿の王」の著者 上橋菜穂子(うえはし なほこ)さんは、1962(昭和37)年7月15日東京生まれです。

 香蘭女学校の中学校・高校を卒業後、立教大学文学部に進み卒業し同大博士課程に進んでいます。
 香蘭女学校では、図書委員として多くの文学作品を読んだと言われており、同級生には、女優の片桐はいりさんがいます。

 現在は、川村学園女子大学教育学部児童教育学科の特任教授をされています。

 1989(平成元)年、「精霊の木」で児童作家としてデビューし、1992(平成4)年に「月の森に カミよ眠れ」で日本児童文学者協会新人賞を受賞し、日本的ファンタジーの書き手として注目を浴びています。

  中でも、「守り人(もりびと)」シリーズは、累計400万部を売り上げ、7ケ国に翻訳されています。
   2014(平成26)年には、国際アンデルセン賞作家賞を受賞しています。

 今回、本屋大賞を受賞した「鹿の王」を含めて、上橋さんの作品は、子供とともに、精霊や魔法使い、動物などが出てくるファンタジーが多く、日本版「ハリー・ポッター」のような気がします。

 最後に、上橋さんが話していた中で、特に印象に残った言葉を紹介します。

「 わたしは、物語というのは、ページをめくった瞬間に主人公になりきってしまって、その人生を生きるというようなことがあったら、いちばんすばらしいなと思っています。

 作品を読み終えたときに、他の人の人生を生きたような気持ちで、今まで自分が気付いていなかった多様な視点をもてたら、それはすごく大きな力になるんじゃないかなと思っているんです。」


 そう言えば、さだまさしさんの「主人公」という歌に、「自分の人生の中では誰もが主人公♪」という歌詞がありました。
 上橋菜穂子さんの作品の中で、誰もが主人公になることができて、そこから新たな視点がもてるとしたら、すばらしいファンタジーですね。

 全国の書店員が一番売りたい本、本屋大賞作品の「鹿の王」、一度、読んでみる価値がありそうですね。

 
<上橋菜穂子作 「鹿の王」>


 
 

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