「ざわわ ざわわ ざわわ」で始まる名曲「さとうきび畑」は、沖縄の本土返還前の1967(昭和42)年に、沖縄戦の激戦地「摩文仁の丘」を訪れた寺島尚彦さん(1930年~2004年、栃木県出身)が、この場所で感銘を受け、作詞・作曲した作品です。
今回は、全部で11番まである「さとうきび畑」の歌詞から、いくつかを紹介しながら、この曲の歴史と背景にある沖縄戦と平和について、考えてみたいと思っています。
♪「さとうきび畑」(作詞・作曲 寺島尚彦) 1番♪
ざわわ ざわわ ざわわ 広い さとうきび畑は
ざわわ ざわわ ざわわ 風が 通りぬけるだけ
今日も 見わたすかぎりに 緑の波が うねる
夏の ひざしの中で
「さとうきび畑」は、1967(昭和42)年に愛媛県新居浜市で行われたコンサートで、歌手の田代美代子さんが歌って、初演されました。
田代美代子さんは、戦争中の1943(昭和18)年に東京都で生まれ、1965(昭和30)年にデビューし、この年に和田弘とマヒナスターズと歌った「愛して愛して愛しちゃったのよ」が大ヒットしました。
ちなみに、「愛して愛して愛しちゃったのよ」は、1990(平成2)年に、サザンオールスターズがアルバム「稲村ジェーン」の中でカバーしています。
♪「さとうきび畑」 2番♪
ざわわ ざわわ ざわわ 広い さとうきび畑は
ざわわ ざわわ ざわわ 風が 通りぬけるだけ
むかし 海の向こうから いくさが やってきた
夏の ひざしの中で
1969(昭和44)年に、森山良子(1948年東京都生まれ)が「さとうきび畑」をレコード化しました。
この時代は、「70年安保反対」の平和運動や「沖縄返還運動」が盛んで、「沖縄を返せ」というスローガンが声高に叫ばれていました。
このような社会情勢の中で、「さとうきび畑」は反戦歌として、当時流行した歌声喫茶などで、広く歌われました。
<さとうきび畑>
♪「さとうきび畑」 3番♪
ざわわ ざわわ ざわわ 広い さとうきび畑は
ざわわ ざわわ ざわわ 風が 通りぬけるだけ
あの日 鉄の雨にうたれ 父は 死んでいった
夏の ひざしの中で
この歌の主人公は、沖縄戦で父を亡くした少女です。彼女は、見たこともない父の面影を、「さとうきび畑」の風の音を聞きながら探す。そんな歌です。
沖縄戦は、第二次世界大戦末期の1945(昭和20)年3月~6月に、沖縄で行われた「日本国内唯一の地上戦」で、日米合わせて20万人以上が戦死し、うち94000人は民間人で、沖縄県に住んでいた子供・老人を含む住民の人たちでした。
この歌が作られるきっかけになった「摩文仁の丘」は、沖縄戦跡国定公園の中にあり、沖縄戦の激戦地の一つです。
♪「さとうきび畑」 6番♪
ざわわ ざわわ ざわわ 広い さとうきび畑は
ざわわ ざわわ ざわわ 風が 通りぬけるだけ
知らないはずの 父の手に だかれた夢を 見た
夏の ひざしの中で
1972(昭和47)年に沖縄は日本に復帰し、沖縄県となりました。しかし、多くのアメリカ軍基地は残り、今に至るまで沖縄の大きな負担となっています。
「さとうき畑」はNHKのみんなの歌で、2回放送されています。
1度目は、1975(昭和50)年にちあきなおみさん(1947年 東京都生まれ)の歌で放送され、
2度目は、1997(平成9)年に森山良子さんの歌で放送されました。
さらに、2001(平成13)年12月には、森山良子さんが「涙そうそう」とのカップリングでシングルCDとして発売し、翌2002年の「日本レコード大賞 最優秀歌唱賞」を受賞しました。
♪「さとうきび畑」 8番♪
ざわわ ざわわ ざわわ 広い さとうきび畑は
ざわわ ざわわ ざわわ 風が 通りぬけるだけ
お父さんて 呼んでみたい お父さん どこにいるの
このまま 緑の波に おぼれてしまいそう
夏の ひざしの中で
「さとうきび畑」は、森山良子さんがライフワークのように歌い、2005(平成17)年には、長男の森山直太朗さんと「NHK紅白歌合戦」でデュエットしています。
もちろん、「さとうきび畑」は、ほかにも多くの歌手がカバーしています。たとえば、クラッシク系の新垣勉さんや鮫島有美子さん、アニソンの女王と言われる堀江美都子さん、ポピュラー系では夏川りみさんや松浦亜弥さんなどです。
かつて「歌声喫茶」で歌われた「さとうきび畑」は、広く日本中で歌われる歌となっています。
<さとうきび畑歌碑 (沖縄県読谷村)>
♪「さとうきび畑」 10番、11番♪
ざわわ ざわわ ざわわ 忘れられない 悲しみが
ざわわ ざわわ ざわわ 波のように 押し寄せる
風よ 悲しみの歌を 海に返してほしい
夏の ひざしの中で
ざわわ ざわわ ざわわ 風に 涙はかわいても
ざわわ ざわわ ざわわ この悲しみは 消えない
2003(平成15)年9月、TBSで「さとうきび畑の唄」というこの曲をモチーフにしたドラマが放送されました。
主演の明石家さんまさんをはじめ、黒木瞳さん、仲間由紀恵さん、坂口憲二さんなどが、沖縄を舞台に熱演し、26.4%という高い視聴率を記録し、芸術祭テレビ部門大賞を受賞しました。
「さとうきび畑」という平和の歌が、いつまでも歌われる日本であってほしいと願います。
また、みんなでそういう日本を守らないといけないと思います。
最後に、「さとうきび畑」が、夢の燃料になるかも知れないという話をします。
さとうきびから作られる自然にやさしい「バイオエタノール」を燃料に、車を走らせる研究が、沖縄などの国内研究所で進んでいるそうです。
うまくいけば、石油の利権で戦争をしたりしなくてもすむ、平和の象徴に「さとうきび畑」がなるかも知れませんね。
一首: 「海風に 平和を歌う さとうきび 涙と笑顔 勇気ささやく」
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