あじけないデザインのノートが多い中で、カブトムシやチョウ、ヒマワリなどの大きな写真が表紙のノートは、教室の中でキラキラ輝いていました。
このショウワノート(本社 富山県高岡市)が作った「ジャポニカ学習帳」は、大阪万国博覧会が開催された1970(昭和45)年に発売され、現在まで45年間にわたって販売されているロングセラー商品で、累計売り上げは12億冊以上にもなります。
2012(平成24)年、このジャポニカ学習帳の表紙から、カブトムシなどの「昆虫」の写真が一斉に消えてしまいました。
きっかけは、保護者からのこんな意見でした。
・「娘が、昆虫写真が嫌でノートを持てないと言っている。」・「授業で使うとき、表紙だと閉じることもできないので困る。」 保護者だけではなく、教師からも同じような声が上がったそうです。
この時、ショウワノートは、こう考えたそうです。
「お子さんがノートを使う機会は多く、もしかしたら友達と一緒にいる時間より長いかもしれません。学校の先生もノートを集めたり、添削したりと、目に触れる機会は多いと思います。
そんな商品だからこそ、一人でも嫌だと感じる人がいるのであればやめよう、ということになりました。虫に接する機会が、減ったということでしょうかね。」
世の中には、虫が好きな人もいるし、嫌いな人もあります。それは、個性だから「みんな違ってみんないい。」と思います。
ただ、「虫嫌いの意見」がどれほど寄せられたかはわかりませんが、全部やめなくてもいいと思います。「選択の自由」を確保しておけば、大丈夫だったのではないかなと思います。
子供の頃、虫が大好きで、カウトムシやクワガタムシを野山に追いかけて、「ファーブル昆虫記」の世界に憧れた私としては、昆虫の表紙の「ジャボニカ学習帳」が、発売中止になったのは、残念でなりませんでした。
<写真 カブトムシ>
ところが、その「ショウワノート」が、2015(平成27)年4月~6月にかけて、「ジャポニカ学習帳の45周年記念企画」として、amazon(アマゾン)と共同で、「歴代ジャポニカ学習帳の人気投票」(いわば「ジャポニカ総選挙」)を、1970年代、1980年代、1990年代、2000年代の4つの期間に分けて、各20種類ずつのノートを対象に投票を実施しました。
その結果が、7月7日に発表されましたので、各年代のベスト3を紹介します。(★印は昆虫)
<1970年代>
1位 「ノコギリクワガタ」★
2位 「シマリス」
3位 「アゲハチョウ(蝶)」★
<1980年代>
1位 「パプアヒメカブト」★
2位 「ムナキカメムシ」★
3位 「ヘラクレスオオカブトムシ」★
<1990年代>
1位 「キララシジミ(蝶)」★
2位 「ゼブラホソミトンボ」★
3位 「ナミウラモジタテハ(蝶)」★
<2000年代>
1位 「デリアス・ヒパレテ(蝶)」★
2位 「アピアス・オルフェナ(蝶)」★
3位 「アオイロトケイソウ(花)」★
並み居る「花」や「動物」、「魚」などのノートを退け、なんと、4つの年代のトップはすべて「昆虫」でした。
そればかりか、ベスト3に入った12種類のうち10種類までが、「昆虫」だったのです。
ショウワノートでは、人気投票で各年代の1位になった「ノート」4種類と、最初のシリーズの「ひまわり」のノートの5冊をセットにして、数量限定で復刻版として、アマゾンで販売しました。
すると、1日で売り切れたそうです。
今も「カブトムシ」や「クワガタムシ」を自宅で飼っている昆虫ファンの私としては、「昆虫人気」が健在であったので、ほっと胸をなでおろしています。
もちろん、花も動物も魚も嫌いではありませんが、愛すべき虫たちを「子供に見せてはいけないもの」には、しないでやってほしいと、心から思っています。
今回の昆虫人気に驚いた「ショウワノート」は、今後、一般販売も検討しているそうですので、期待したいと思います。
<限定発売 ジャポニカ学習帳セット>
「ジャポニカ学習帳」が生まれた1970(昭和45)年は、学習ノートが全盛で、20社ほどが競合していたそうです。その中で、「ショウワノート」は学習帳メーカーとしては最後発でした。
この状況を打開するために生まれたのが、「ジャポニカ学習帳」です。
学習帳の表紙には、「昆虫や植物の写真」を使用し、中ページには、当時は「一家のステータス」だった百科事典の 『ジャポニカ百科事典』(小学館)とコラボレーションした、「学習百科のミニ知識」を掲載しました。
「生きもの写真」と「ジャポニカ百科事典」という2つのオリジナリティが、「ジャポニカ学習帳」を、発売45年・売上12億冊以上の「超人気ロングセラーノート」に育てた、と言っても過言ではないと思います。
最後に、ジャポニカ学習帳の表紙の写真を、30年間に渡って、1200枚以上撮影し続けていてNHKの「ダーウィンが来た」などの企画撮影もしている、昆虫・植物写真家・自然ジャーナリストの山口進さん(やまぐち・すすむ 1948年~ 三重県出身)の言葉を紹介します。
「 ジャポニカ学習帳の<世界特写シリーズ>が始まって30年。この間に地球環境が悪化し、かけがえのない自然が目の前でガラガラと音を立てて崩れていきました。その現状を前に、僕は涙をこらえながら旅をしました。
そんな僕を救ってくれたもの、それは美しい花ばなや虫たちの姿と、各地で出会う人びとのあたたかな表情でした。特に子どもたちの笑顔は、「素晴らしい未来があること」を感じさせてくれました。
国が変わろうとも、時代が変わろうとも子どもたちの笑顔は変わりません。
今ある素晴らしい星「地球」を記録しておくことは、将来を担う子どもたちにきっと役立つに違いありません。美しい花や大自然を見ることで、あの笑顔は永遠につながると信じています。」
(山口進さんブログ「 山口進の気まぐれ撮影日誌」より抜粋)
たかがノート1冊ですが、されどノート1冊ですね。
<一句>
・「あの頃の 心のノートは 開けたまま」
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