2015年7月12日日曜日

広がる「安保法制反対」の声 ~若者から93歳寂聴さんまで~

 「 この国の平和と国民の命を守るために、友人やそのまた友人が戦地に行くことに、私は耐えられません。
 やられたらやり返す、やられる前にやる。そんな報復合戦に参加し、これから先も誰かの犠牲の上に 自らの平和が成り立っていくことに私は耐えられません。

 私たちの憲法は先進的ですばらしいものだと信じています。   
 徹底して武力行使をしないことこそが、世界の平和と安全を形作ると信じています」
    (2015年6月27日 渋谷ハチ公前にて 佐竹美紀さん⦅23歳⦆のスピーチ)


 日本では、一時、死語となっていた「デモ」や「集会」という言葉が、長い沈黙を破って、学生・若者たちを中心に広がり始めています。

 「安保法制反対」を叫ぶ、参加者たちの声は次第に大きくなり、国会周辺では6月14日(日)に2万5000人、7月10日(金)にも1万5000人が参加しました。(主催者発表)
 次第に、マスコミも無視できない規模になっています。

 毎週、国会議事堂前で行われている集会は、「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)」が呼びかけて実施されています。

 「憲法をまもれ!」「戦争立法絶対反対」「GIVE  PEACE A CHANCE」など、様々なプラカードを掲げた、学生や若者、会社員、高齢者までが参加しています。その輪は渋谷や札幌、京都、横浜など、全国に広がっています。

 何より、戦争になれば一番影響を受けることになる「若者たち」が、立ち上がったことは大きいと思います。
 その学生たちのスピーチを、2つ紹介します。

「この国は、国民を守るためといって戦争法案を通そうとしてます。もうウソをつくのはやめてください。
 つい100年前まで選挙権は常識ではありませんでした。権利を獲得するため、先人たちは血を流しました。そして、言葉を理想を、命をかけて未来に届けてくれました。
 わたしたちも、自分の意見を発して未来にタイムカプセルを埋めなければいけません。」
         (小林叶さん 大学4年生)

「 私たちは大きな岐路に立っています。立憲主義と民主主義を守るのか。それとも、戦争へ向かうのか。
  50年後、生きているのは私たちです。今こそ、沈黙を破って声を挙げましょう。」
         (もえ子さん 大学2年生)

<渋谷ハチ公前のデモ>



  ここで、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障体制の整備について」の政府見解を紹介します。

「 国民の命と平和な暮らしを守ることは、政府の最も重要な責務です。我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しています。
  我が国の安全を確保していくには、日米間の安全保障・防衛協力を強化するとともに、域内外のパートナーとの信頼及び協力関係を深め、その上で、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする法整備を行うことが必要なのです。
  これにより、争いを未然に防ぐ力、つまり抑止力を高めることができます。」
   (「内閣官房ホームページ」より)


  いったいどちらの主張が、世論の支持を得ているのでしょうか?。
 公平を期すために、いくつかのデータを紹介します。

 朝日新聞が行った調査では、「憲法判例百選」(有斐閣、2013年、法律を志すものは誰もが手にする判例集)の著者である憲法学者209人に「安保法制について聞いたアンケート」では、
・「安保法制は憲法違反」と答えた学者が104人(50%)、
・「憲法違反の可能性がある」が15人(7%)、
・「憲法違反でない」は2人(1%)
という結果だったそうです。
 国会の参考人質疑と同じで、圧倒的に「安保法制は憲法違反」と考える憲法学者が多いようです。

 次に、安保法制について、国会や政府へ決議を行った331の地方議会の決議の内訳は、「反対」が144議会(44%)、「慎重」が181議会(55%)で、「賛成」は6議会(2%)でした。

 さらに、2015年5月末に共同通信社が実施した「全国電話世論調査」では、「安保法制で自衛隊が戦争に巻き込まれるリスクが高くなる」との回答が68%あり、「政府の説明不足」との回答も81%を超えています。

 政府は、南シナ海の中国進出などを念頭に安保法案成立を急いでいるようですが、全体的に考えると、少なくても「憲法改正なしに安保法案を制定する」ことには、学者も地方議会も国民世論も、「NO」と言っているように思えます。
 今回の法律は、やっぱり無理があるのではないでしょうか。

 この状況で、自民党と公明党の与党が多数を占める国会が、強行採決をしてでも「安保法案」を成立させたとしたら、「戦争と平和」や「国民の命」、「憲法」に関わる重要法案だけに、大きな疑問と不安が残ると思います

<国会議事堂前の集会>

 


 最後に、「文化勲章受章者」で93歳の作家・瀬戸内寂聴(1922(大正11)年 徳島県出身)さんが、国会議事堂前の集会に病をおして1人で命がけで参加した時のスピーチの一部を紹介します。

「 私は、戦争の真っただ中に青春を過ごしました。
  いい戦争なんて、絶対にありません。戦争は、すべて人殺しです。それは、人間の一番悪い行為です。
  最近の日本の情勢を見ていますと、あの怖い戦争に、どんどん近づいているような気がします。今の日本の状態は、昭和15(1940)年ころとそっくりです。このままの政治が続いたら、必ず戦争になります。
 私は高齢です。でも、どうせ死ぬなら、このことをみなさんに、申し上げて死にたいと思っています。
 お釈迦様の言葉で、一番すばらしいのは「殺すなかれ」という言葉です。
 人間が幸せになる根本の思想です。」
            (2015年6月18日 国会前集会での瀬戸内寂聴さんのスピーチより)


  「戦争を知らない子供たち」として日本で育った私たちの責任は、子供や孫もまた「戦争を知らない子どもたち」であり続ける日本にすることだと思います。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿