2016(平成28)年8月25日10時5分ころ、青森県藤崎町の奥羽線北常盤駅で、中学2年の少女が自殺しました。
少女は、最初の報道では匿名でしたが、家族が少女のスマホに残されたいじめを苦に自殺するという内容の「遺書」とともに、実名を公表しました。
少女は、青森県青森市にある浪岡中学校2年生だった葛西(かさい)りまさん、13歳でした。
葛西りまさんのスマホのメモアプリには、次のような内容の「遺書」が自殺する1時間30分前に、残されていました。(りまさんの家族が公表したものです。)
「遺書」
突然でごめんなさい。ストレスでもう生きていけそうにないです。
●が弱いのは自分自身でも分かってるし、●が悪い所もあったのは知ってるけど、流石にもう耐えられません。
東京いって全国でまた皆で優勝したかったけど、行けなくてごめんなさい。だから7人で、優勝してください。●も頑張ってね。
学校生活も散々だし、それでストレスたまってたのに、仮病とかいう人が沢山いて、説明しても、あまり信じてくれなかった。
1、2年の時に●の噂流したりそれを信じたりいじめてきたやつら、自分でわかると思います。もう、二度といじめたりしないでください。
(中略)
家族へ。先立つ不幸を許してください。もう無理です。特別虐待があったわけでもない(中略)
文章めちゃくちゃでごめんなさい。
みんなに迷惑かけるし、悲しむ人も居ないかもしれないくらい生きる価値本当にないし、綺麗な死に方すらできないけど、楽しい時もありました。
本当に13年間ありがとうございました。いつか、来世ででも●が幸せな生活をおくれる人になれるまで、さようなら。
また、会おうね。
2016年8月25日木曜日」
<葛西りまさんが自殺したJR北常盤駅>
葛西りまさんが鉄道自殺をした8月25日は、新学期が始まった翌日でした。
夏休みが終わって始業式に行って、「とても、明日から学校に行けない」と思い詰めた13歳の少女の気持ちは、自分の中学時代(私もいじめられていました)を思い出すとよくわかります。
本当に、かわいそうです。
でも、りまさんの家族は、こうおっしゃっています。
「りまは、手踊りが好きで、仲間と幸せな時間を過ごしてきました。写真のような笑顔が本来の表情です。決してかわいそうなだけの子供ではありません。」
手踊りとは、青森県黒石市の「黒石よされ」と呼ばれる踊りで、葛西りまさんは全国優秀したこともある「黒石よされ」の踊りの名手でした。
遺書にあるように、葛西りまさんが入っていたグループは、事件のあった2日後、りまさんの死を知らされないまま上京し、全国大会に参加し見事、優勝しました。
おそらく、葛西りまさんの大きな誇りが「黒石よされ」だったのだと思います。
実は、葛西さんが自殺した「JR奥羽本線北常磐駅」も、青森市から黒石市に行く途中にあります。
次の写真は、葛西りまさんが黒石よされを踊る様子です。
<黒石よされを踊る葛西りまさん(葛西さんの家族が公表)>
この写真は、2016年8月15日、つまり葛西りまさんが亡くなる10日前の写真で、一度は「2016年黒石よされ写真コンテスト」で最高賞の黒石市長賞を受賞することが内定していました。
ところが、写真に写っている葛西りまさんが自殺したことがわかると、実行委員会は「賞にふさわしくない。」と言って、家族の了解も得ずに一方的に賞を取り消しました。
葛西さんのお父さんは、「受賞内定を家族で喜んでいたのに、取り消しでどん底に突き落とされたような気持ちです。」と、がっかりした気持ちを話されました。
そして、このまま娘の存在を消されたくないという想いで、りまさんの写真と氏名を公表しました。
私は、このニュースを初めて聞いた時、本当に激しい憤りを感じました。
もし、このまま受賞が取り消されたら、「もう二度といじめはやめてください。」という、葛西りまさんの意に反して、死んでからまで、今度は大人にいじめられたことになる。そんな想いでした。
私と同じ想いのやさしい人が、全国にたくさんいたようで、黒石市には千通を超える抗議のメール・電話が殺到しました。
それを受けて、黒石市長は「受賞の取り消しを取り消す」と発表して、葛西りまさんの笑顔の写真が、再び脚光を浴びることになりました。
その後、りまさんの家族と黒石市は和解したそうです。
りまさんの家族、特にお父さんの勇気が、社会に抹殺されかけた自殺したりまさんの「いじめを無くしてほしい」という想いを復活させたのだと思います。
<黒石よされのポスター>
青森県黒石市の「黒石よされ」は、毎年8月に開催される盆おどりで、徳島の「阿波おどり」、岐阜の「郡上おどり」と並び、「日本三大流し踊り」の一つと言われています。
「よされ節」は、東北地方に伝わる民謡で、「よされ」は「貧困や凶作の世は去れ」という意味で、「世去れ節」と書かれることもあります。
因(ちな)みに、2016年の踊り子は、1日2100人、観客は2日間で76,000人余りでした。
今回のニュースは、「学校」のいじめはもちろんですが、「社会的ないじめ」についても、いろいろ考えさせられます。
ネットの一部では、葛西りまさんをいじめた生徒の実名も出ていますが、「葛西さんはいじめを無くしたかった」だけで、「生徒の実名を公表するいじめ」を決して望んではいないと思いますので、このブログでは、もちろん氏名の公表はしません。
だけど、これだけは、いじめた人たちにわかってほしいです。
私の経験では、いじめる方は軽い気持ちでも、いじめられる方は「死」を意識する、あるいは決断するほど深刻な問題です。
「相手が笑えないジョーク」は、いじめなのです。
最後に、もう一つ思うことがあります。
それは、葛西りまさんの家族の「やさしさをあきらめなかった」愛情の深さです。
もし、家族が黙っていたら、りまさんの存在そのものを消されかねない状況でした。
そこで、お父さんが声をあげ、葛西りまさんの遺書と実名と、「いじめに負けないで踊っている写真」を公表した勇気は、りまさんへの愛情の現れだと思います。
家族の勇気と愛情が、亡くなったりまさんの想いと笑顔を、復活させたのだと信じたいです。
きっと天国で、りまさんは「黒石よされ」を踊っていることでしょう。
♪「黒石よされ唄」
♪
黒石よされ節どこにもないよ
サァーアンヨ
歌って見しゃんせ 味がある
ヨサレサァーアンヨ
見たか黒石聞いたかよされ
ヨサレサァーアンヨ
盆の踊りは日本一
ヨサレサァーアンヨ♪
<一句>
りまの夢 いじめの世去れ 永遠に
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