2016年10月22日土曜日

鳥取県で震度6弱の地震「熊本→鳥取→?」は要注意パターン ~緊急地震速報とは~

2016(平成28)年10月21日、西日本各地で「緊急地震速報」が発表されて、鳥取県中部の倉吉市などで最大震度6弱の強い揺れが観測されました。
 マグニチュード(M)は6.6で、震源は鳥取県中部、深さは11kmでした。

 幸い津波はなく、死者も出ませんでしたが、熊本地震と同じく余震が続いています。
 これで2016年になって、「4月の熊本地震で震度7が2回」に始まり、「6月に北海道函館市で震度6弱」、そして「10月に鳥取県倉吉市などで震度6弱」と、震度6以上の地震が続いています。
 ここで、気になることがあります。

 このブログで、「巨大地震と前後の出来事」を紹介してきましたが、その中で70年あまり前の地震の起こり方のパターンと、今年の「熊本→北海道→鳥取」と似ているのです。


 1941(昭和16)年11月19日、九州東岸の日向灘を震源とするM(マグニチュード)7.2の地震が起こり、熊本県と宮崎県で震度5を記録して死者2人が出ました。

 続いて1943(昭和18)年6月13日に、青森県東方沖でM7.1の地震が発生し、北海道苫小牧市や浦河町などで最大震度4の地震がありました。

 そのあと、1943(昭和18)年9月10日、鳥取県鳥取市でM7.2の地震が発生し、震度6を記録し、1083人が亡くなりました。

 震源地と規模は微妙に違いますが、「熊本県→北海道→鳥取県」という地震発生のパターンは、1941年から1943年の地震と、2016年がよく似ていると思いませんか?


<2016年10月21日の鳥取地震の各地の震度  気象庁HPより>



 地震の予知は現在のところできませんが、過去の歴史で地震の発生パターンを調べて、地震への「備え」をすることはできます。

 それでは、1943年9月の「鳥取地震」のあと、何が起こったのかを紹介します。

 「鳥取地震」から1年3か月後の1944(昭和19)年12月7日、三重県沖を震源とするM7.9の「昭和東南海地震」が発生し、静岡県御前崎市と三重県津市で最大震度6を記録しました。この地震で、伊豆諸島・関東から紀伊半島までの広い範囲の太平洋側で津波が発生し、死者・行方不明者1223人を出しました。

 その翌年、終戦の年である1945(昭和20)年の1月13日には、三重県津市で最大震度5を記録するM6.8の「三河地震」が発生し、津波も伴い、死者・行方不明者2306人の被害が出ました。

 さらに翌年の、1946(昭和21)年12月21日には、和歌山県沖から四国沖を震源とするM8.0の津波を伴う「昭和南海地震」が発生し、東海~九州の広い範囲で最大震度5を記録し、関東から九州までの地域で、1443人が亡くなりました。

 戦中から終戦直後の混乱期ということもありますが、1943年の「鳥取地震」から1946年の「昭和南海地震」まで、わずか3年間で、1000人以上の死者を出す地震災害が4回も起こっています。

「ちょっと待った。2016年の鳥取地震は、1943年の鳥取地震のような大きな被害は出てないから、違うのでは。」
 という疑問の声が聞こえそうです。

 確かに、1943年の鳥取地震はM7.2で死者が1083人なのに対して、2016年の鳥取地震はM6.6で幸い犠牲者は、今のところ報告されていません。
 ところが、それで「まったく別の地震」とは、言い切れません。

 犠牲者の数は、震源の場所によって大きく変わります。1943年の鳥取地震は「鳥取市街地の直下型地震」なのに対し、2016年の鳥取地震は中国山地の中だったので被害が小さかったとも言えます。

 さらにもう一つ言うと、過去の歴史を調べてみると、鳥取県での地震は、揺れの大きな地震が複数回起きる傾向があります。

 実は、1943年9月10日の大きな被害を出した「鳥取地震」の半年前の1943年3月4日と3月5日に、いずれもM6.2の地震が続けて発生し、軽傷者11人を出しています。

 つまり、1943年の例のように、2016年の10月21日の地震は実は「前震」で、この後、さらに規模の大きい「本震」が発生する可能性もあるのです。

 必要以上に恐れることはないと思いますが、「もしも」に備えて、鳥取県在住の方はもちろん、ほかの地域のみなさんも、もう一度、地震・津波への「備え」をしておく必要はあると思います。


<1943年の鳥取地震>




 ここからは「災害から命を守るマメ知識」として、今回は「緊急地震速報」について紹介したいと思います。

「緊急地震速報」は、2007年10月1日から気象庁が中心となって発表しているものです。
 緊急地震速報には、「一般向け」と「高度利用者向け」がありますが、ここではテレビや携帯・スマホでも受信できる「一般向け」の緊急地震速報について、ご紹介します。

  全国220か所にある気象庁の地上地震計と、東海沖にある15か所の海底地震計などの観測データのうち複数で地震の揺れをとらえた場合、瞬時に衛星で受信しコンピューターで解析して発表するものです。
 この緊急地震速報は、地震波が揺れは小さいがスピードの速い初期微動と呼ばれる縦波・P波(秒速6~7km)と、揺れが大きくスピードの遅い主要動と呼ばれる横波・S波(秒速3.5km)の到着時間の差を活用して、地震波の到着前に、揺れの大きさや震度4以上の発生する地域などを速報するものです。

 「緊急地震速報の警報」は、最大震度が5弱以上と推定される場合に、震度4以上の揺れがあると予測されている地域に発表されます。
 さらに、「緊急地震速報の特別警報」は、推定最大震度が6弱以上の場合に発表されます。

<2016年鳥取地震で震度6弱を記録した倉吉市の名所「打吹玉川(うつぶきたまがわ)」の町並み> 



 
 
次に、「緊急地震速報」が発表された時の具体的な対応を紹介します。

 詳しくは、下の図をご覧いただければと思いますが、テレビ・ラジオや携帯・スマホなどで「緊急地震速報」の発表を聞いたら数秒から数十秒しかないので、「周囲の状況に応じて、あわてずに、まず身の安全を確保する」ことを最大の基本とします。

 学校・会社・自宅などの室内では、落下する恐れがあるなどの危険な場所から離れて、机の下に隠れるなど、頭を保護するのが一番です。
 周辺に人がいたら、周りの人にも「頭を守れ、机の下に隠れろ」などの声掛けもしたいものです。
 特に、子供や障害者などには、手伝って守ってください。

 外でいる場合は、ブロックや塀、落下物の近くからは離れて安全なところでしゃがみます。また、車の運転中は、ゆっくりブレーキをかけ、ハザードランプをつけて道路の左側に車を寄せて停車します。
 
 ある場所で実際に緊急地震速報が出たとき、お互いに顔を見合わせて呆然と立ち尽くしていたというシーンも見たことがあります。
 やっぱり普段からの訓練と、シミュレーションが大切だと思います。




最後に、地震の後、津波のある・なしで、避難行動は大きく変わりますので、改めて、「地震の発表」から、津波の有無を判断する3つの要素を紹介します。

(1)地震の震源が海であること(今回の鳥取地震のように、陸が震源の場合は津波は起こりません。)

(2)地震の大きさを示すマグニチュード(M)が、6.5以上であること。(ただし、最初の気象庁の発表は実際より小さい場合もあります。例えば、東日本大震災の時の1回目のマグニチュードは7.6でした。)

(3)地震の震源が60kmより浅いこと。

 この3つの条件がそろえば、「津波の恐れあり」と判断し、津波警報等が出ていなくても、できる限り高い場所へ避難することが大切です。

 みんなで、「いつかは必ず来る次の大地震」に備えておきたいですね。





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