2016年8月3日水曜日

巨大地震と前後の出来事6「昭和の東南海・南海地震」~南海トラフ地震の発生確率~

 巨大地震と前後の出来事の6回目は、いよいよ最も新しい「南海トラフを震源とする巨大地震」とされている「昭和東南海地震」と「昭和南海地震」について、紹介します。

 幕末(1854年)に起こった「安政地震」から90年後の、1944(昭和19)年12月7日午後1時36分頃に、「昭和東南海地震」が起こりました。

 震源地は三重県沖で、地震の規模を示すマグニチュード(M)は7.9、死者・行方不明は東海地方を中心に1223人を記録しました。

 静岡県御前崎市と三重県津市で最大震度6を記録し、伊豆から紀伊半島にかけて最大9mの津波も観測されました。
 しかし、この地震の情報は、戦争中で軍の厳しい情報統制のため、ほとんど報道されませんでした。


<昭和東南海地震の震度分布>





 さらに2年後の、1946(昭和21)年12月21日午前4時19分頃に、和歌山県南方沖を震源とする「昭和南海地震」が起こりました。

 地震の規模を示すマグニチュード(M)は8.0、死者・行方不明は九州から近畿地方を中心に1330人を記録しました。

 九州・四国・中国・中部の12県で最大震度5を記録し、九州から房総半島にかけて最大6mの津波が観測されました。

 この2つの地震は併せて「昭和地震」と呼ばれますが、太平洋戦争終戦(1945年)の前後の時期で記録が少ないことと、「東南海地震」→「南海地震」が2年の時間差で起こったこと、そして「東海地震」が起こっていないことが特徴と呼ばれています。

<昭和南海地震の震度分布>





 では、この2つの地震の前後に起こったことを、調べてみましょう。

 まず「昭和東南海地震」の3年前、1941(昭和16)年11月19日、宮崎県沖の日向灘でM7.2の地震があり、熊本県と宮崎県で最大震度 5を記録し、死者2人が出ました。
 この地震では、九州東岸、四国沿岸で1mの津波が観測されています。
 太平洋戦争が始まる直前(19日前)の出来事でした。

 続いて、「昭和東南海地震」の前年の1943(昭和18)年の9月10日、鳥取でM7.2の直下型の「鳥取地震」が発生し、鳥取県鳥取市で最大震度 6を記録し、死者1,083人が出ました

 1944(昭和19)年12月の「昭和東南海地震」の発生のあと、1945(昭和20)年1月13日には、M6.8の「三河地震」が発生し、三重県津市で最大震度 5を記録し、死者・行方不明者2,306人の犠牲が出ました。

 1946(昭和21)年12月の「昭和南海地震」の2年後、1948(昭和23)年の6月28日にM7.1の「福井地震」が発生し、 福井県福井市で最大震度 6を記録し、死者・行方不明者3,769人を出しました。


 整理してみると、1943年9月の「鳥取地震(直下型)」のあと、「昭和東南海地震(海洋型)」、「三河地震(直下型)」、「昭和南海地震(海洋型」、そして1948年6月の「福井地震(直下型)」まで、わずか5年間で5回も1000人以上の犠牲者が出る地震が発生しています。

 因みに、「福井地震」の次に日本国内で1000人以上の犠牲者が出る地震は、47年後の1995(平成7)年に起こった「兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災、死者・行方不明6437人)
です。


<福井地震の写真>





 これまで、684年の「白鳳(はくほう)地震」から、1944年・1946年の「昭和地震」まで、 9回の「南海トラフを震源とする巨大地震」を中心に紹介してきました。

 これら9回の地震の間の発生間隔は、平均で約158年になります。
 このうち、地震の間隔が最長なのは、「永長・康和地震(1096年・1099年)」と「正平地震(1361年)」の間の262年で、最短は「安政地震(1854年)」と「昭和地震(1944年・1946年)」の間の90年です。

 この昭和地震の発生時に「東海地震」が発生していないということが、次の「南海トラフを震源とする巨大地震」が早く起こるのではないかと言われている所以(ゆえん)です。


 これまでの記録から言えることをまとめてみます。

(1) 本震の前後には、直下型地震が本州・四国・九州で起こることが非常に多い。

(2) 最初に地震が起こるのは、記録がはっきりしたものでは、「東南海」単独、「東南海・南海」または「東南海・東海」、「3連動」で、いずれも紀伊半島(潮岬)の南を震源とする「東南海地震」が最初に発生している。

(3) 「東海・東南海・南海」の3つの地震が同時に発生したものが9回のうち少なくても3回ある。

(4) 3つの地震が同時発生しなかった場合、「最初の地震」と連動して、「東海地震」または「南海地震」が発生した例が4回あり、その間隔は32時間から2年2ヶ月である。


<和歌山県潮岬>




 2016年現在、最後に起こった南海トラフを震源とする巨大地震である「昭和南海地震」の発生から、70年が過ぎています。
 
 中央防災会議の試算では、今後30年以内に震度6弱以上の地震が発生する確率は、2016年1月現在で、静岡市が68%、津市で62%、和歌山市が57%、高知市で73%などとなっています。

 さらに、政府の地震調査委員会は、南海トラフ地震の震源域で、「今後30年以内にマグニチュード(M)8~9級の地震発生確率」は、60~70%と推定しています。

 いずれにせよ、「南海地震を震源とする巨大地震」の発生は、避けられないもと考えた方がよく、その時期も確実に近づいています。


 少なくても、地震・津波の発生時の避難場所と、家族などとの連絡手段については、普段から準備・シミュレーションしておくことが大切です。

 もちろん、3日分の飲料水や食糧の確保、お風呂の水をためるなど、トイレ等に使う生活用水の確保も、普段からやっておくことが必要です。

 巨大地震は過去の災害ではなく、日本の「備えておくべき未来の災害」だということを、いつも認識しておきたいものです。

<昭和南海地震の記念碑(徳島県海陽町)>


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