2016年11月4日金曜日

♪「小さい秋 みつけた」と作詞家サトウハチローのやんちゃ時代

びっくりするようなニュースや、オリンピックやノーベル賞、ピコ太郎などに驚いているうちに、季節はすっかり秋になりましたね。(北日本では雪の便りが届いてますね。)

 そこで今回は、久々に季節と名曲の話をします。
 秋を象徴する懐かしい童謡の一つ「小さい秋みつけた」の歌詞を味わいながら、2016年秋の写真をいくつか紹介します。
 まず、1番の歌詞を紹介します。


♪「小さい秋みつけた」(作詞 サトウハチロー、作曲 中田喜直)

♪(1番)
誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた

めかくし鬼さん 手のなる方へ 
澄ましたお耳に かすかにしみた
呼んでる口笛 もずの声
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた ♪

 
<写真 秋の夕暮れ>




 日暮れの時間が早くなって、「つるべ落とし」の秋の勇暮れや、人影が長くなっていくようすが、「ちいさい秋」を感じる一つかも、知れませんね。

 他にも、和菓子屋さんのメニューに「月」や「柿」が入ったり、最近ではコンビニやスーパーで「ハロウィン」コーナーができたり、テーマパークのハロウィンCMなどを見ると、「ちいさい秋 見つけた」となりますね。
 ハロウィンが終わり、ハロウィン仕様のお菓子が安売りされ、店員さんが「クリスマス」の飾り付けをしているのを見ると、季節の移り変わりを感じますね。


 童謡「小さい秋 みつけた」は、1955(昭和30)年に、NHKの「秋の祭典」という特別番組で、童謡歌手の伴久美子さん(当時は13歳、東京都荒川区出身 1942年~1986年)が歌ったのが最初でした。(タイトルだけ「小さい秋」で歌詞は「ちいさい秋」です。)

 作詞は、「かわいいかくれんぼ」などの童謡や、戦後復興を象徴する歌謡曲「リンゴの唄」などを作詞したサトウハチローさんです。
 一方、作曲は、「夏の思い出」や「めだかのがっこう」などを作曲した中田喜直さんです。

 では、2番の歌詞をごらんください。

♪「小さい秋みつけた」

♪(2番)
誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた

お部屋は北向き くもりのガラス
うつろな目の色 とかしたミルク
わずかな すきから 秋の風
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた ♪


<写真 秋の和菓子>




 この歌を作詞した頃、サトウハチローさんが住んでいたのは東京都文京区弥生の自宅だと言われています。庭の「はぜ」の木が色づくのをみて作ったと、自分で話されたことがあるそうです。  
 私も近くで住んだことがありますが、「なつかしい昭和の東京」が残るいい町です。 

 2番の歌詞に出てくる「お部屋は北向き くもりのガラス」というのは、病人がいる部屋のイメージだとも言われています。

 作詞のサトウハチローさんは、昭和を代表する詩人・童謡作家ですが、若い頃は実は「大変なやんちゃ少年」でした。

 学校の塀に大きな穴を開けて生徒の出入り自由にしたり、巡査の帽子をひったくって川に捨ててケンカをふっかけたりで、東京各区の警察署の留置場が30余りあった時代に、2つの留置場を除いて、ほとんどの留置場に入れられたほどの不良少年でした。

 また、東京大学や東京芸術大学にニセ学生として潜入し、新入生に本を売ったりして稼ぎました。
 転校11回、落第3回、そして父親から勘当されたのは17回に及びました。
 結局、旧制早稲田中学を中退しました。

 「小さい秋みつけた」をはじめ、「うれしいひなまつり」「かわいいかくれんぼ」、「リンゴの唄」、「悲しくてやりきれない」など、やさしくあたたかい歌詞を書いた詩人・サトウハチローの青春時代が「やんちゃ」だったのは驚きですね。


<写真 紅葉する木々>




 それでは、3番の歌詞です。

♪「小さい秋みつけた」

♪(3番)
誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた
 
昔の昔の 風見の鳥の
ぼやけたとさかに はぜの葉ひとつ
はぜの葉 赤くて入日色
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた ♪


<写真 夕暮れの中を散歩する少年とおじいさんとわんこ>




 平安時代に清少納言が書いたように、秋は1日で言うと「夕暮れ」が似合う季節ですね。
 彼女が見つけた「ちいさい秋」は、夕暮れの他に、「烏(からす)が飛んで帰っていく様子」や、「雁の群れ」、「風の音」、「虫の音(ね)」などです。

 もう北国では雪も降っていますが、あなたも「平成のちいさな秋」を、探してみませんか。


 最後に、サトウハチローさんが1954(昭和29)年、つまり「小さい秋 みつけた」の前年に発表した、心にしみる童謡「秋の子」の歌詞を紹介します。


♪「秋の子」 (作詞:サトウハチロー 作曲:末広恭雄)


すすきの中の子 一、二、の三人
はぜつりしてる子 三、四、の五人
どこかで やきぐり やいている
つばきを のむ子は 何人だろな


かきの実みてる子 一、二、の三人
さよならしてる子 三、四、の五人
ごはんに なるまで おもりするおんぶを する子は 何人だろな



ひぐれに走る子 一、二、の三人
ふろたきしてる子 三、四、の五人
こおろぎ あちこち なきだした
さみしく 聞く子は 何人だろな♪

 
 まるで、映画「「三丁目の夕日」の世界ですね。
 残り少ない秋の向こうには、どんな冬が来るのでしょう?

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