2016年11月23日水曜日

東北・関東で震度5弱の地震と津波が発生~津波への備えの再確認を~

2016(平成28)年11月22日5時59分頃、福島県沖を震源とするマグニチュード(M)7.4の地震が発生し、その後、最大1.4mの津波(宮城県仙台港)が発生しました。 みなさんの所は、大丈夫でしたか?

 気象庁は、この地震を「東日本大震災の余震と思われる」と発表しました。
 因みに、1.4mの津波は、2011年の東日本大震災以降で東北太平洋側で観測された最大の高さで、「津波警報」がこの地域に出たのは、2012年12月以来、4年ぶりということです。
 また震度5弱の揺れは、福島県、茨城県、栃木県で観測されました。
 幸い、死者の報告はありませんでした。


 ただ、この機会に「津波」への対応について、もう一度、考えておくことは大切だと思いますので、今回の問題点を検証してみます。

<2016年11月22日に発生した地震の震度分布(気象庁HP)>



 まず、私は地震直後、今回の地震の「津波の有無と大きさ」について、テレビとウェザーニュースの「メール情報」を見ながら、考えました。(緊急地震速報は、宮城県・福島県・茨城県とその周辺でしか発表されませんでした。)
 最初の情報は、ウェザーニュースの有料の防災メールで知りました。
 6時03分の「地震発生メール」で、「22日5時56分頃、東北地方で強い揺れを感じました。念のため津波に注意してください。<震度5弱 福島県浜通り>」という文面でした。

 
 それを受けてテレビをつけると、気象庁が震源は福島県沖(いわきの東北東60km付近)で、深さ10km、マグニチュード7.3と発表していて、「福島県沿岸に津波警報、青森県太平洋側~千葉県外房に津波注意報を発表」というニュースが流れていました。
(ウェザーニュースのメール情報は、6時05分に「津波警報発表」が来て、6時11分に「震源・震度情報」がきました。)

 この時点で、私は、以前、紹介した「気象庁予報官から聞いた津波発生の3条件」に、今回の地震情報をあてはめてみました。

<津波発生の3条件>
(1)震源が海 → 福島県沖なので○
(2)震源の深さが60kmより浅い → 深さ10kmなので○ 
(3)マグニチュード(地震の規模=M)が6.5以上 → M7.3なので○
 3つとも、あてはまりますので「津波発生の危険性」は高いと判断できました。(あとで、震源の深さは25km、マグニチュードは7.4に修正されましたが、結果は同じです。)

 次に津波の大きさを考えました。
 津波の大きさは、ほぼ「マグニチュード(地震エネルギー)の大きさ」で決まります。

 過去の経験から、「おおよそM7.5以上は大津波の可能性があり、M7.0以下は小さい津波」と考えられましたので、M7.3という今回の地震はその中間という判断をしました。(ただし、東日本大震災の時の最初の発表マグニチュードは7.6でその後、9.0まで大きく修正された例もありますので、続報に注意は必要です。)

 気象庁の発表も、3段階(津波注意報、津波警報、大津波警報)のうち、2番目の「津波警報(最大1m~3m)」でしたので、「東日本大震災級の大津波」ほどではないが、被害が出る可能性は十分ある津波という少し落ち着いた目で、各局テレビの朝6時台の報道を見ました。

 まず、一番、目を引いたのはNHKで、「今すぐ高い所へ逃げてください」とアナウンサーが連呼し、テロップも「にげて」でした。
 ただし、津波の実況中継はズームせずに海を写していたので、海面の異常はなかなかとらえられませんでした。


 一方、民報で目を引いたのは、日本テレビ系の「ZIP」枠で、冷静な報道のもと、映像も港をズームしていたので、引き波などの海面変化を見事にとらえていました。

 「大津波警報」ではなかったので、「ただちに、できるだけ高いところへ逃げて」と連呼するのには、少し違和感がありました。
 つまり、本当に大津波の時(大津波警報=3m以上)の報道と、どう区別するのかということが疑問です。

 それでも、NHKやフジテレビ系(めざましテレビ枠)の三宅アナなどが繰り返していた、「東日本大震災を思い出してください。」という言葉は、説得力があるなと思いました。

 現実には、「避難勧告・避難指示の対象者25万人に対し、実際に避難したのは6000人で、避難者が少なかった(2.4%)」とか、「車で避難する人が多く渋滞した」などの、以前と同じ課題は残りました。

 他にも、宮城県仙台港で、気象庁が想定した最大津波高1.0を超す1.4mの津波が観測され、気象庁はあわてて、津波発生2時間後に「津波注意報」を「津波警報」に切り替えるハプニングもありました。
 気象庁は事前にコンピューターで計算した10万パターンの津波のシミュレーションから、最も近い条件のものを選んで発表するそうですが、それでも「想定を超える津波」が発生したことになります。自然は、恐るべしですね。

 もう一つの問題は「デマ」です。
 今回の地震で、SNSを通じて「津波やべええええええ!!!!」という文字と、東日本大震災の時の写真を使って福島原発が津波に襲われているかのような、デマを流した人がいるそうですが、「正確な情報が命」の地震・津波の初期対応時に、このようなことをするのは、人命の危険も招きかねない危険な行為だと思います。

 福島原発といえば、「福島第二原発」の燃料プールの冷却浄化系の停電が1時間以上も続いたのに、マスコミ発表が遅くなったという問題も発生しています。
 東京電力は、22日7時頃には「異常は認められない」と発表していたのに、ショックでした。

 報道の仕方、避難方法、警報発表、デマ、そして原発、まだまだ課題は多いけど、でも地震や津波のたびに、反省し検証するのは大切だと思います。


<2016年11月22日 朝の空>


 ここで「津波警報・津波注意報」について、もう一度整理しておきます。
 現在、気象庁が発表する「津波の警報・注意報」は3つです。

(1)津波注意報(予想津波高 20cm以上1m以下)
  対応「海の中にいる人はただちに海から上がって、海岸から離れてください。」

(2)津波警報(予想津波高 1mを超え3m以下)
  対応「沿岸部や川沿いにいる人は、ただちに高台や避難ビルなど安全な場所に避難してください。
 標高の低いところでは津波が襲い、浸水被害が発生します。人は津波による流れに巻き込まれます。」

(3)大津波警報(予想津波高3mを超えるもの 5m、10m、10m以上の3段階に分けられ「巨大」と表現されます。)
  対応「木造家屋が全壊・流失し、人は津波による流れに巻き込まれます。沿岸部や川沿いにいる人は、ただちに高台や避難ビルなど安全な場所へ避難してください。」


 特に「大津波警報」が発表された場合は、ただちに「少しでも高い場所・建物」に逃げる必要がありま
す。


<津波警報・津波注意報の区分 (気象庁HPより)>


 最後に、津波避難の教訓である「津波てんでんこ」「命てんでんこ」と「釜石の奇跡」の話を紹介します。
 「津波てんでんこ」と「命てんでんこ」は、三陸地方の言い伝えです。
 「津波てんでんこ」は、津波の時は家族がばらばらになっても気にせず、高台へ避難せよという教訓で、「命てんでんこ」は、災害の時は自分で自分の命を守れということです。

 一方、「釜石の奇跡」は、東日本大震災の時、群馬大学の片田敏孝教授の教えを守って避難した「釜石東中学校」と隣接する小学校の児童・生徒562人全員が、助かったという実話です。
 その避難方法の三原則は、「(ハザードマップなどの)想定にとらわれるな」、「その状況下で最善をつくせ」、「率先避難者たれ」です。

 想定外の災害がくることを頭にいれて、あらかじめ決められた避難場所で満足せず、できるだけより安全な場所(高台やビルの高層階)へ逃げ続けろ。さらに、その時には、まわりの人にも「避難」を呼びかけながら、自分が率先して逃げろというものです。

 日ごろから訓練していた「釜石東中学校」の生徒は、全力で走りながら、小学生や大人にも「避難しましょう」と呼びかけ、指定された避難場所よりさらに高台に逃げて助かったというものです。


 ここで一つ、注意すべきことは、「津波てんでんこ」などの教訓は、あくまで「その時は自分だけで逃げろ」ということで、ほかの人を見捨てろということではありません。
 この教訓の裏には、あらかじめ家族と避難場所や方法を打ち合わせておいて、災害発生時にはお互いを信頼して、まずは各自で自分の命を守る行動をせよという意味が含まれているのです。

 津波や地震災害の怖いところは、「たくさんの人が同じ行動をしているから安全」ということにならないところです。
 東日本大震災では2万人近くが犠牲になり、インド洋大津波では十万人単位の犠牲者が出ています。

 地震・津波の発生時は、まずは、「自分の命を守る」ために、個人個人が「でんでんこ」に行動することが重要になるのです。


 次回は、たった35人で300人を超す「AKB48グループ」の名実ともにライバルになった「乃木坂46」の話の続編をしたいと思っています。

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