毎年、思いますが、「お盆」というのは、不思議な休みですね。正月やゴールデンウィークなどがカレンダーも休みなのに対して、お盆は祝日・休日ではありません。(最近、8月11日は「山の日」になりました。)
銀行や官公庁は休みではないので、お盆は、自然発生的にできた「民間の休日」と言ってもいい、不思議なお休みです。
この「お盆休み」も、昭和と平成では、大きく変わりました。
昭和のお盆休みには、叔父、叔母、従兄弟、親戚の親戚などなど、多くの帰省した人たちがおじいさんやおばあさんの家に集まり、賑やかな休みでした。
井戸水で冷やしたスイカ、
茹でたトウモロコシ、
アブラゼミやクマゼミの声、
エアコンではなく扇風機とうちわ、
そして蚊取り線香と線香花火。
それらも、
どこの家でも聞かれた子供たちの声とともに、今は昔の風物詩となりました。
少子化・核家族・高齢化が進んだ平成の今では、考えられませんね。
ただし、それらの平和な「昭和のお盆」の風景も、ほんの少し過去を辿れば、戦争、食糧難がありました。
歴史と庶民の暮らしは、無関係ではないことがよくわかります。
私は、いつもの年は、ただの休みに帰省して墓参りに行く程度の「お盆休み」でした。
でも、今年は、
前半に自分も含めて、家族が相次いで病気やケガで倒れて入院したので、
もう一度、お盆、そして8月15日を、大切に考えなおしておきたいと思っています。
そこで、今回はお盆について、紹介します。
<線香花火>
お盆は、もともと「盂蘭盆会(うらぼんえ)」という仏教用語の短縮形で、
旧暦7月の15日前後をさしていました。
中国などで信仰されている道教では、7月は「鬼月」と言って、7月1日に地獄の蓋が開き、死者たちが故郷に帰ってきて、7月15日に地獄の蓋が閉まるので、それまでに帰って行くという考え方があります。
日本でも、人は死ぬと、山や川で霊や神様として住み、子孫を守るという考え方があります。
この先祖の霊が帰って来られるのが1年に2度、お正月とお盆です。
この考え方が元になって、日本でも、旧暦7月15日を中心に、
7月13日~16日頃に、先祖を供養する風習が定着しました。
ところが、1873(明治6)年にグレゴリオ歴(新暦)が採用され、お盆は、従来の旧暦の7月15日に加えて、新暦の7月15日頃に行うところや、月遅れの新暦8月15日頃にお祀るところの3つに別れました。
現在では、一部の地域を除いて、月遅れの8月15日前後に、お盆の行事が行われるようになっています。
新暦7月15日や旧暦7月15日に比べて、一番根拠のない8月15日が「お盆」として定着したのも不思議ですね。
お盆の主な行事を紹介します。(旧暦7月、または新暦8月)
・1日=「釜蓋朔日」(かまぶたついたち)
地獄の蓋が開く日で、祖先の霊が山川から帰って来安いように、山川に通じる道の草刈りをする地域もあります。
・7日=「七夕(棚幡)」
故人を迎えるための棚や幡(盆)を置く日。
・13日=「迎え火」
先祖の霊をお迎えする日で、13日の夕方に野火を炊いたり、盆提灯を飾ったりします。
・15日頃=「盆踊り」
もともと、先祖の霊を慰霊するための踊りで、全国各地で踊られています。
たとえば盆踊りの代表格の「徳島市の阿波踊り」は、もともと8月13日~16日のお盆期間中でしたが、台風などの影響で、8月12日~15日になっています。
また、「盆踊り」と言われていても、帰省時期や他の行事を避けたり、旧盆に合わせるなどの目的で、高知の「よさこい祭り」、富山県富山市の「おわら風の盆」、東京の「高円寺の阿波踊り」など、多くの行事がお盆の時期をはずして開催されています。
・16日=「送り火」「藪(やぶ)入り」
先祖の霊を、無事に送るために焚かれる火で、「京都の五山の送り火」が有名です。
他に、灯籠や船などを川や海に流す「灯籠流し」なども16日を中心に行われています。
また、嫁や住み込みの女中・丁稚(でっち)などが、実家に帰れる「藪入り」も、16日です。
<写真:日本三大盆踊りの一つ 「阿波踊り」(徳島県徳島市)>
それぞれの宗教で考え方はいろいろ違うと思います。 でも宗教とは別に、お盆はお正月とともに、年2回、亡くなられた人たちと生きている私たちが再会できる日(あるいは思い出す日)だと考えれば、貴重な機会に、亡くなった先祖や友人のことを考えてみるのもいいのではないでしょうか。
祖父、祖母、病気や事故で亡くなった同級生や友人、鬼籍に入った親戚などなど、5分か10分でいいから、故人に想いをはせるのはいいことだと思います。
もう一つ、8月15日と言えば「終戦記念日」です。
72年前の1945(昭和20)年8月15日、玉音放送で天皇陛下自らが、日本が降伏したことを国民に公表した日です。
因みに、歴史的には、1945年8月14日が「日本がポツダム宣言受諾を連合国に通告した日」で、
1945年9月2日がポツダム宣言の履行を定めた文書に日本が調印した日です。
これにより「太平洋戦争」及び「第2次世界大戦」が終わりました。死者は太平洋戦争だけで300万人、第2次世界大戦全体では6200万人とも言われています。
「戦没者を追悼し、平和を祈念する日」とされている8月15日に、戦争の悲惨さと平和の大切さについて、もう1度、考えてみたいものです。
黙祷。
<長崎平和公園 (長崎県長崎市)>
最後は、8月15日の夜、長崎県長崎市で行われるお盆の行事のことを歌った名曲「精霊流し」を紹介します。
「精霊流し(しょうろうながし)」♪は、1974(昭和49)年に、さだまさしさん(1952年生まれ、長崎県長崎市出身)らが所属するフォークソングのグループ「グレープ」が発表した曲です。
この曲の歌詞は、さだまさしさんの母方の従兄が、水難事故で亡くなってしまったときの「精霊流し」の思い出をモチーフに作られたものです。
初回プレスはわずか4500枚でしたが、その後大ヒットし、累計130万枚を売り上げ、この曲でさだまさしさんは、日本レコード大賞「作詞賞」を受賞しています。
♪「精霊流し」(作詞・作曲 さだまさし 歌:グレープ)♪
♪1
去年のあなたの 想い出が
テープレコーダから こぼれています
あなたのために お友達も
集まってくれました
二人でこさえたおそろいの
浴衣も今夜は一人で着ます
線香花火が見えますか 空の上から
約束通りに あなたの愛した
レコードも一緒に 流しましょう
そしてあなたの 舟の跡を
ついてゆきましょう
私の小さな弟が
何にも知らずに はしゃぎまわって
精霊流しが華やかに 始まるのです
2
あの頃あなたがつま弾いた
ギターを私が弾いてみました
いつの間にか さびついた糸で
くすり指を切りました
あなたの愛した母さんの
今夜の着物は浅黄色
わずかの間に年老いて
寂しそうです
約束通りに あなたの嫌いな
涙は見せずに 過ごしましょう
そして黙って 舟の跡を
ついてゆきましょう
人ごみの中を 縫う様に
静かに時間が 通り過ぎます
あなたと私の人生を
かばうみたいに ♪
<新ルナールの言葉 2>
・8月15日----平和、哀悼、感謝を、日本人が忘れてはならない日
0 件のコメント:
コメントを投稿