特に九州北部の豪雨では、32人が死亡しまだ10人前後が行方不明となっています。
このニュースを見ていて思ったのが、「難しい気象情報がたくさんあって、よくわからない。」という声が聞こえてきそうなほど、大雨警報、はん濫注意情報、記録的短時間大雨情報、避難指示など、気象情報の多さと複雑さです。
梅雨も、少しずつ南から明けてきていますが、梅雨末期の集中豪雨、雷雨、そしてこれから台風のシーズンと大雨の季節が続きます。
そこで、今回は、大雨・洪水の気象情報を危険度別にランク付けして、なるべくわかりやすく紹介したいと思います。
また、後半は雨の時期の風物詩「カタツムリ」の話をします。
大雨についての気象情報には、基本的には「大雨注意報」「大雨警報」、そして「大雨特別警報」の3つがあります。
大雨注意報は、「大雨による災害(浸水や土砂災害など)が起こる可能性があることを知らせ、災害への準備や情報取得などに注意するよう呼びかけるもの」です。
一方、「大雨警報」は、「重大な災害が起こることを警告するもの」で、自治体の避難情報に合わせての避難や、住宅でとどまる場合でもより安全な場所(2階や崖から離れた部屋)でいるなど、大雨災害への警戒を呼びかけるものです。
「大雨注意報」や「大雨警報」の発表基準は、浸水災害については「その場所及び流域の1時間または3時間雨量」、土砂災害については「地面にどれぐらいの雨量が含まれているか(土壌雨量指数)」です。
ちょっと難しい数値ですので、東京都千代田区を例にして思い切って簡単に言うと、「大雨警報」は、1時間34mm以上の大雨が予想される時か、「累積雨量-時間数×2」が180mmを超えた時に発表されます。
この「大雨警報」より、さらに危険度が高まり、数十年に1度の大雨が予想される時に出されるのが「大雨特別警報」で、これは、その地域にいる人に、ただちに命を守る行動をとるように呼びかけるものです。
<「大雨関係の気象情報の活用例」気象庁HPより>
「大雨注意報」「大雨警報」「大雨特別警報」を補完する情報として、気象庁が発表するのが、1時間100mm以上の猛烈な雨が降った場合(雨量計のない所ではレーダー解析などで推定)に出されるのが、「記録的短時間大雨情報」です。
また、ある地域の土砂災害の危険性が増しただちに避難する必要がある場合に、気象庁と都道府県などから共同で出されるのが「土砂災害警戒情報」です。
ここまでをまとめると、大雨情報の危険度ランクでは、低い方から高い方へ「(1)大雨注意報→(2)大雨警報→(3)記録的短時間大雨情報・土砂災害警戒情報→(4)大雨特別警報」ということになります。
特に、(3)及び(4)は「スーパー警報」と言ってもいい情報で、この場合は、全力で身を守る行動(避難が基本ですが、浸水などがあれば自宅の安全な場所でいることも選択枝です)が必要です。
一方、気象庁が単独で発表する「洪水警報」とは別に、川の増水やはん濫などに対する水防活動や住民の避難行動の参考となるように、「気象庁と、国土交通省または都道府県の機関」とが共同して、「あらかじめ指定した河川」について、洪水の予報を行うのが、「指定河川洪水予報」です。
危険度の高い方から順に、「レベル5 はん濫発生情報(洪水が発生している状態)」、「レベル4 はん濫危険情報(はん濫が発生する危険が差し迫っている状態)、「レベル3 はん濫警戒情報」、「レベル2 はん濫注意情報」、「レベル1 水防団待機水位」があります。
ここでも、レベル4になると「ただちに避難が必要」ですが、すでにはん濫しているレベル5の場合は、避難ルートが浸水しているかどうかを見て、より安全な行動をとることが必要です。
さらに、避難の必要性を、市区町村などの自治体が住民に呼びかけるのが、避難情報です。
まず、「避難準備情報」は、文字通り避難準備をするようにとの情報ですが、お年寄りや子供など自分だけで避難出来ない人は、この段階での避難が必要です。(2016年、岩手県のグループホームで避難が遅れ多くの犠牲者が出たことを思い出してください。)
次に「避難勧告」は、危険が迫っているので避難をするように呼びかけるものです。
さらに、明白な危機が迫ったときに出されるのが「避難指示」です。
ただし、避難情報は市区町村長の判断で出すので、最近は、行政の出し遅れの責任回避のために「○○市全域に避難指示」という場合も多く、自分のいる場所がどのようになったら避難するのかは、普段から各家庭や職場で考えておき自主避難の基準を考えることも重要です。
気象庁は、最近発生した多くの重大災害や、競争相手である民間気象会社が出来た危機感から、たくさんの気象情報を出してくれています。
しかし、問題は、これらの情報を適切に国民に伝え、私たちがその情報をうまく活用できるかどうかです。
ちなみに、大雨などの特別警報の情報を気象庁は、「携帯電話の緊急メールやテレビ・ラジオ」などで配信することも初めています。
<気象庁のポスター>
後半は、雨の季節の風物詩「カタツムリ」の話です。
カタツムリという生物学上の分類はなく、大雑把には、陸貝のうち、殻のないあるものをナメクジ、殻のあるものをカタツムリといいます。
ただし、カタツムリの殻をとったらナメクジになるのかというと、そうではなく、カタツムリの体と殻はくっついていますので、殻をとるとカタツムリは死んでしまいます。
ですから、「カタツムリ。カラをとったらナメクジ♪」では、あるようでないのです。
カタツムリは、他にマイマイ、デンデンムシ、蝸牛などたくさんの呼び方がありますが、語源ははっきりしません。
平安時代末期(1180年頃)に、後白河法皇が編集された「梁塵秘抄(りょうじんひしょう)」には、次の歌が掲載されています。
舞へ 舞へ 蝸牛
舞わぬものならば
馬の子や牛の子に
蹴えさせてむ 踏み破らせてむ
実に美しく舞うたらば
華の園まで 遊ばせむ
(訳)
舞えよ 舞えよ かたつむり
舞わないならば
馬の子や牛の子に
蹴らせて、踏ませて、カラを破らせるぞ
上手に舞うことができたなら
花園で 遊ばせてやるよ
平安時代から、日本人がカタツムリを愛していたのは、間違いないようですね。
次に、虹色のカタツムリの話です。 ただし、虹色のカタツムリは、殻が虹色ということではなく、カタツムリの「うんこが虹色」になるという話です。
カタツムリはあまり消化しないため、食べたものがそのままに近い形で出るのです。
たとえば、ニンジンを食べたカタツムリはオレンジのうんこをしますし、レタスを食べたらグリーンのうんこをするようです。
カタツムリは紙も食べるそうですので、いろんなものを食べさせたら、虹色のカタツムリのうんこが生まれる可能性もありそうですね。
<写真 カタツムリ>
最後は、カタツムリの歩く速さの話です。
「のろま」の代名詞のカタツムリですが、そのスピードはどれぐらいでしょうか。
またカタツムリとカメは、どちらが早いでしょうか?
ある調査では、カタツムリは時速48mです。
もう一つの<のろま代表>の「リクガメ」は、時速500mですから、カメのスピードがカタツムリに圧勝ですね。
それでも、のろまでもコツコツ進むカタツムリのスピードを尊敬していた人がいます。
それは、文化勲章の受章者で「長崎平和祈念像」などを造った日本を代表する彫刻家・北村西望さんです。
102歳まで生きた北村さんは、カタツムリのようにコツコツを座右の銘としていて、「私は天才ではない。だからいい仕事をするために長生きするのです。」と言い、こんな川柳を詠んでいます。
「たゆまざる 歩みおそろし かたつむり」
大雨の時は、カタツムリのように慎重に、でも確実に避難してください。
できれば、大雨の前に安全避難の準備と計画を「たゆまず」してたいものですね。
<一句>
「たゆまざる 準備しっかり 防災の」
♪「かたつむり」(文部省省歌 1911(明治44)年)♪
♪1
でんでん むしむし かたつむり
おまえのあたまは どこにある
つのだせ やりだせ あたまだせ
2
でんでん むしむし かたつむり
おまえのめだまは どこにある
つのだせ やりだせ あたまだせ♪
♪「かたつむり」(文部省省歌 1911(明治44)年)♪
♪1
でんでん むしむし かたつむり
おまえのあたまは どこにある
つのだせ やりだせ あたまだせ
2
でんでん むしむし かたつむり
おまえのめだまは どこにある
つのだせ やりだせ あたまだせ♪
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